2018年7月に成立した改正相続法。これにより新設された制度の一つに、「持ち戻し免除の推定規定」があります。
これは、生前贈与や遺言で一定の配偶者に自宅不動産を贈与・遺贈した場合、被相続人があえて何ら意思表示をしなかったとしても、その自宅不動産は遺産分割のベースとなる金額に含めずに計算してくださいと主張したと推定する、という制度です。
制度の内容については別記事で詳しく解説していますので、そちらもご参照ください。
持ち戻し免除推定規定と、婚姻期間
では、この制度の対象となるには、婚姻期間の制限はあるのでしょうか。
条文では、下記のように規定されています。
(特別受益者の相続分)
第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
4 婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。
条文でも明記されている通り、本規定の対象となるのは、「婚姻期間が20年以上」の配偶者です。
なお、婚姻期間20年未満の配偶者については、単に「推定がおよばない」というだけですので、仮に婚姻期間20年未満の配偶者に対する贈与等につき持ち戻しを免除したい場合には、遺言書等で「持ち戻しの対象としない」旨を明記しておくことで、持ち戻し免除とすることは可能です。
この規定はあくまでも、「特に何ら別途意思表示をしなくても、持ち戻しの対象としない旨の意思表示をしたことにする」というだけですので、誤解しないようにしましょう。
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