遺言で財産を渡そうとした相手に受け取り拒否されることはある?

遺言書作成後の出来事

遺言書で財産を渡そうとしたにも関わらず、相手から受け取りを拒否されてしまうことはあるのでしょうか。この記事では、受け取り拒否ができるかどうかといったことに加え、遺言書作成時の注意点についても解説します。

遺言書に書けば、相手に財産をもらう義務が生じるのか

結論からお伝えすれば、遺言書に書いたからといって、相手に受け取る義務が生じるわけではありません。遺言書を作るのは、あくまでも遺言者の一方的な行為です。その一方で、相手にも受取拒否をする自由があるのです。

まずは、このことを知っておきましょう。

遺言書の財産を受け取り拒否する方法

では、遺言書に書かれた財産を受け取り拒否するには、どうすれば良いのでしょうか。この方法は、下記のパターンによって異なります。それぞれ見ていきましょう。

「相続させる」とされた遺言を受け取り拒否をする方法

「相続させる」とされた遺言で書かれた財産につき受け取り拒否をするには、原則として家庭裁判所での相続放棄をしなければなりません。相続放棄には期限があり、その期限は「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」とされています。通常は、被相続人が亡くなってから3ヶ月以内だと考ええておけば良いでしょう。

相続放棄をすることにより、その人は最初から相続人ではなかったものとされます。これにより、「相続させる」遺言で書かれた財産の受け取りを拒否することができますが、他の財産についてもいっさい相続する権利がなくなることに注意してください。

なお、他の相続人や受遺者などが全員納得するのであれば、相続人全員で話し合い、遺言と異なる遺産分割協議を成立させる余地はあります。この場合には、相続放棄は必要ありません。

ちなみに、「相続させる」遺言の対象者は、相続人だけです。相続人ではない人に対して遺言で「相続させる」ことはできません。一方で、相続人に対してであっても「遺贈する」ことは可能です。

包括遺贈の遺言を受け取り拒否する方法

「包括遺贈」を拒否する場合にも、「相続させる」遺言の拒否と同様に家庭裁判所で相続放棄の手続きをしなければなりません。包括遺贈とは、例えば相続人ではない人に対して「財産の3分の1を遺贈する」など、財産をひっくるめて渡すことを言います。

包括遺贈を拒否する場合に相続放棄が必要となってしまう理由は、法律が包括受遺者を相続人と同様に扱うこととしているためです。

(包括受遺者の権利義務)

第九百九十条 包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。

「遺贈する」とされた遺言を受け取り拒否をする方法

一方で、特定遺贈の場合には、家庭裁判所での相続放棄の手続きを経ることなく、いつでも遺贈の拒否をすることが可能です。その方式も特に問われていませんが、のちの手続きの利便性や「言った言わない」の問題を避けるため書面で行うことが一般的でしょう。

特定遺贈とは、例えば「山田太郎に、下記の不動産を遺贈する」「鈴木花子に、預貯金のうち金200万円を遺贈する」など、個別具体的な財産を特定して遺贈する方法です。相続人以外に財産を渡す場合には、前述の包括遺贈より、こちらの方式のほうが一般的かと思います。

こちらは、民法に下記のように明記されています。

(遺贈の放棄)

第九百八十六条 受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。

2 遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

受け取り拒否をされた財産はどうなるか

それでは、受け取りを拒否されてしまった財産は、どうなってしまうのでしょうか。ケースごとに見ていきましょう。

遺言書に指定があればそれに従う

受け取りを拒否された財産につき遺言書で行き先の指定があれば、その指定に従います。

遺言書での指定とは、例えば「下記の財産は山田太郎に遺贈する。ただし、山田太郎が遺言者の死亡以前に死亡していた場合または山田太郎が本遺贈を放棄した場合には、下記の財産は鈴木花子に遺贈する」などです。

遺言書に指定がなければ相続財産になる

一方で、遺言書で特に指定がなければ、受け取りが拒否された財産は相続財産となります

つまり、相続人全員で話し合い、拒否された財産につき誰が相続するのかを決めることになるということです。

遺言書作成にあたっての注意点

これらを踏まえて、遺言書を作成する際には、下記の点に注意するようにしましょう。

いらない財産を押し付けようとしない

まず、いらない財産を遺言書で他者に押し付けるようなことは、まずできないと考えてください。例えば、相続人が誰も欲しがらない田舎の土地や空家などをその不動産が所在する市町村へ「遺贈する」遺言書などです。

この場合には、市町村から受け取りが拒否されてしまい、結局のところ遺言書に書いていなかったのと同じ状態となることが目に見えています。

なお、いらない土地を放棄できる「相続土地国庫帰属法」が2021年に成立しており、2024年までに施行される予定です。管理費を10年分支払うなどの要件はありますが、使い道のない土地の処分に困ってる方は、ぜひこちらも参考とされると良いでしょう。

相手方に伝えておく

自分へ財産を遺贈する遺言の存在を本人が亡くなってから初めて知ったら、状況によっては驚いてしまうかもしれません。場合によっては、遺贈の受け取り拒否をされてしまう可能性もあるでしょう。

そのため、できれば生前に「自分が亡くなったら、この財産はあなたに渡そうと思っている」ということを伝えておかれた方が安心です。

特に、病院など活動を応援したい団体への遺言での寄付(遺贈)を検討している場合には、必ず遺言書を作成する前に、遺言での寄付の受け入れ体制があるかどうか確認をしておいてください。

拒否された場合の第二希望を書いておく

併せて、もし受け取り拒否をされてしまった場合に備え、「下記の財産は山田太郎に遺贈する。ただし、山田太郎が遺言者の死亡以前に死亡していた場合または山田太郎が本遺贈を放棄した場合には、下記の財産は鈴木花子に遺贈する」のように、第二希望の受取人についても指定しておくと安心です。

この記事を書いた池邉からひとこと

遺言書で財産をあげると書いたからと言って、相手に受け取る義務が生じるわけではありません。これは、例えば病院など活動を応援したい団体への遺言での寄付(遺贈)であっても同様です。

「お金であれば、どこでも受け取ってくれるだろう」と思うかもしれませんが、実はそうでもありません。団体によっては、事務処理の煩雑さや相続争いに巻き込まれる懸念などから、寄付を受け付けていない場合もあるのです。弊所で遺言の作成をサポートしたお客様に代わり、「そちらに寄付をしたいと考えている方がいらっしゃるのですが」と打診することもあるのですが、私の印象では概ね3分の1から半分程度の団体が「お気持ちは嬉しいのですが、お断りさせてください」との回答です。

事前に分かっていれば遺言書作成前に他の団体への寄付を検討することもできますが、事前に確認せず、いざ相続が起きてから断られてしまっては、遺言者さまの想いを反映することができなくなってしまうかも知れません。

このように、遺言に書いても相手に受け取る義務が生じるわけではありませんので、遺言をつくる際はぜひこの点にもご注意頂きたいと思います。

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