暦年贈与と精算課税
贈与には、「暦年贈与」という通常の贈与と、「相続時精算課税」という、特例的な贈与方法があります。
贈与税は、年110万円まで非課税で、それを超えた部分に、超えた額に応じて累進課税がされるという、通常の贈与です。
一方、相続時精算課税とは、適用に様々な要件はあるものの、累計2,500万円(2020年11月現在)までの贈与は贈与税が非課税になり、一見大変魅力的に思えます。
相続時精算課税は絶対「お得」?
では、多額の財産を非課税で贈与できる相続時精算課税制度は、本当に「お得」な制度なのでしょうか。
実はそうではありません。相続時精算課税は、読んで字のごとく、「相続時に」「精算」する制度です。
確かに、この制度を使えば、贈与を受けた時点では2,500万円までは税金がかかりません。しかし、これで終わりというわけではなく、この制度を使って贈与を受けた財産は、すべて相続税の課税対象として戻されてしまい、戻された額に対して相続税がかかる、という制度なのです。
この制度の利用価値は、原則として節税ではなく、例えば「自分が亡くなるときでは遅い。そうではなく、子供世代がお金のかかる時期に財産を渡してあげたい。でも、(一般に)贈与税は相続税より高いから、贈与税の対象となる生前には渡せない」という状況を解消することです。
また、相続時には贈与時点の価額で持ち戻されるため、今後値上がりする可能性の高い財産を贈与する場合には、節税としても利用できます。しかし、「確実に値上がりする」という財産が果たして存在するのかは、甚だ疑問です。
相続時精算課税を、単に「税金が安くなる」制度だと考えて安易に適用すると、デメリットの方が大きい場合もあります。
非課税枠に安易に飛びついてしまうのではなく、税理士等の専門家に相談をしながら、慎重に検討されることをお勧めします。
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