遺言書は、法的要件だけ満たせば良い?
遺言書をつくるとき、やはり多くの人がまず気にするのは、法的要件。確かに遺言書には形式上の要件も多く存在し、その要件を満たさなければ、せっかくの遺言書が無効になってしまいます。
しかし、法的要件はあくまでも、遺言書が遺言書であるための最低限の要件でしかありません。実際に相続が発生し、スムーズに手続きをするため、また、無用な揉め事を防ぐためには、法的要件を満たすのみでは不十分です。
ここでは、遺言書の見直しのうち、「農地法上の手続きは可能か」という点に焦点をあて、解説していきます。
遺言書があれば、原則として誰に何をあげても良いが・・
原則として、遺言書であれば、財産を渡す相手に制約はありません。子や妻といった家族に相続させることはもちろん、子がいる場合の兄弟やいとこといった相続人ではない親族に財産を渡すことも可能です。また、お世話になった友人や知人、内縁の配偶者など、法律的には他人であっても、財案を渡すことが可能です。
※一部の相続人には「遺留分」とって最低限保証された権利がありますので、これを侵害すると取り返すための請求(「遺留分侵害額請求」といいます。)がされる可能性はありますが、ここではいったん置いておきます。
他の法律に制限があるケース
しかし、いくら民法が認めていても、他の法律ではNGというケースもあります。その代表的なものが農地です。
法定相続人への相続は問題なし
農地は、農地法という法律で、権利の移転が厳しく制限されています。これは、遺言書であっても例外ではありません。
まず、法定相続人に対して農地を相続させる場合には、「届出」のみ(※)で済みますので、相続できます。
※とはいえ、届出は必要なので忘れないようにしましょう。
法定相続人以外への遺贈には、許可が必要
一方、相続人ではない人に農地を遺贈する場合、これは原則として農地法の「許可」が必要になります。許可を受けるためには、その農地を耕すことや、取得後に所有する農地の面積などの要件があります。
つまり、安易に農地を相続人以外に遺贈するといった遺言書を作成してしまうと、農地法の許可がおりず、結果的に遺言書の内容が実現できない、ということなのです。
遺言書を作る際には、関連する法令も確認の上、実現できる内容で作成するようにしましょう。
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