家庭裁判所で遺言書の検認を無事に終えると、遺言書に検認済証明書が添付されて返却されます。
では、この検認済証明書は、その遺言書が有効だという家庭裁判所のお墨付きだと考えて良いのでしょうか。この記事では、検認済証明書の意味合いや有効無効との関係性について詳しく解説します。
検認(済)証明書とは

まずは、検認済証明書とはどのようなものか、解説します。
検認証明書とは検認を終えたことの証明書
検認済証明書とは、家庭裁判所でその遺言書の検認を終えたことの証明書です。
検認時には遺言書を家庭裁判所に提出するのですが、検認が終わって遺言書が返却される際、検認済証明書がくっついた状態(遺言書と遺言書が入っていた封筒があればその封筒にホチキス留めされ、契印が押された状態)で返却されます。
検認とは
検認とは、家庭裁判所で行う次の手続きをいいます。
相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして,遺言書の偽造・変造を防止するための手続
家庭裁判所HP https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_17/index.html
検認が必要である遺言書は、この検認を経ないことには名義変更などの手続きに使うことはできません。また、封のある遺言書は、この検認の場で開封しなければならないとされています。
検認をすることは遺言書を保管していた人の義務です。民法には次のように記載されており、相続が起きた後速やかに検認をしなければならないとされています。
(遺言書の検認)
第千四条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
検認が必要な遺言不要な遺言

検認は、すべての遺言で必要となるわけではありません。遺言の方式によっては検認は必要ありませんので、どの遺言で検認が必要でどの遺言では検認が不要なのか、確認をしておきましょう。
検認が必要な遺言とは
検認が必要な遺言は、主に次の1つです。
法務局での保管制度を使っていない自筆証書遺言
2020年7月より自筆証書遺言の法務局での保管制度がスタートしています。しかし、保管制度が始まった後であっても、この保管制度を使うかどうかは遺言者の自由であり、従来どおりご自宅などで自筆証書遺言を保管することも可能です。
この法務局での保管制度を使わなかった自筆証書遺言については、検認が必須だと考えてください。この遺言は、検認を経ないとその遺言を使って財産の名義を変えたり預金を変えたりすることはできません。
相続が起きたら、速やかに検認の申し立てをするようにしましょう。
検認が不要な遺言とは
一方、検認が不要である遺言書は、主に次の2つです。
公正証書遺言
遺言書が公正証書遺言であった場合には、検認の手続きは必要ありません。公正証書遺言の原本は公証役場で保管されており、遺言書の偽造や変造が行われる可能性はほとんどないためです。
検認が必要ありませんので、遺言書の謄本や正本がお手元にあれば、その謄本や正本を使いすぐに相続手続きに入ることができます。
法務局での保管制度を使った自筆証書遺言
自筆証書遺言であっても、法務局での保管制度を使っていた場合には検認は不要です。法務局で保管されている自筆証書遺言も、偽造や変造の危険性はないためです。
ただし、この場合に公正証書遺言とは異なり、すぐに手続きに入れるわけではありません。なぜなら、まず法務局からその保管されている遺言に関する「遺言書情報証明書」を取得する必要があるためです。
この遺言書情報証明書を取得するには、その遺言書を書いた被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍や除籍のほか、相続人全員の戸籍謄本や住民票なども提出する必要があります。
さらに、遺言書情報証明書を相続人の1人が請求すると、法務局から自動的に他の相続人に対し遺言書を保管している旨の通知がなされることも知っておいてください。
検認証明書は遺言書が有効とのお墨付きか

さて、それでは、検認済証明書はその遺言が有効であることのお墨付きだと考えて良いのでしょうか。
検認済証明書は有効とのお墨付きではない
結論をお伝えすれば、検認済証明書は決してその遺言書が有効だとのお墨付きではありません。
検認は前述のとおり、その時点での遺言書の状態を保管する目的で行う手続きです。この検認の場では、遺言書の有効無効の判断は一切なされないと考えてください。
例えば、長男が父の名前をかたり勝手に作成した遺言など、当然無効です。しかし、検認の場では遺言の筆跡鑑定がされるわけでもなければ、他者が勝手に書いたのではないかと詰問されるわけでもありません。このような明らかに無効な遺言であっても検認を受けることはできますし、検認済証明書も発行されるのです。
そのうえで、例えば二男など他の関係者が「この遺言は無効だろう」と考えるのであれば、それは検認とは別途その有効性を争う裁判を申し立てる必要があります。
検認では遺言の有効無効の判断はされず、検認済証明書がついていることは有効であるとのお墨付きではありませんので、注意しましょう。
この記事を書いた池邉からひとこと

自筆証書遺言は、公正証書遺言と違って費用も掛かりませんし、自分ひとりで作成できるため手軽な印象があるかと思います。しかし、自筆証書遺言が手軽であるのは、あくまでも「遺言書をつくる方にとって」のこと。残された相続人などからすれば、公正証書遺言のほうが圧倒的に手間が少ないのです。
それは、自筆証書遺言には検認が必要であるという点もそうですし、やはり無効となるリスクや「これは親父の字ではない」などと争いになるリスクがある点からも言えます。
遺言書を何のためにつくるのかと言えば、多くの場合、残された家族に負担を掛けないためであるはずです。こうした観点から言えば、やはり遺言書は残されたご家族がスムーズに手続きできる公正証書で作成しておくことをお勧めします。
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