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相続人の中に、認知症の人がいる場合
父が亡くなったのだけど、母が重度の認知症で、まったく意思疎通が取れない状態なの。どうしたら良いのかしら。
それは大変ですね。相続人の中に認知症の方がいる場合の手続きについてお伝えします。
超高齢化社会といわれる昨今、相続人の高齢化もすすみ、相続人の中に認知症の方がいるケースも増えてきています。
では、相続人の中に認知症の人がいる場合、どうすれば良いのでしょうか。
認知症でも寝たきりでも相続人
まず、認知症であっても寝たきりであっても、相続人であることに変わりありません。相続人になるわけですから当然、認知症の人を無視して行った遺産分割は、無効です。
しかし、認知症の方は、遺産分割協議を有効に成立させることはできません。では、どうすれば良いのでしょうか。
成年後見人の選任
相続人の中に認知症の人がいる場合には、まずその認知症の人の代わりに遺産分割協議を行う成年後見人を、家庭裁判所で選任してもらう必要があります。成年後見人とは、その認知症の方の代わりに、財産の管理をしてく人というイメージです。
この成年後見人は相続手続きのためだけに選ぶわけではなく、相続手続きはあくまでもキッカケに過ぎません。遺産分割協議や相続手続きが終わった後も、原則としてその認知症の方が亡くなるまで、ずっと後見人であり続けます。
成年後見人になるのは、ご家族であるケースもあれば、弁護士や司法書士としった専門家が選任される場合もあります。裁判所に希望は伝えられますが、最終的に選任するのは裁判所ですから、希望した人が選ばれるとは限りません。
原則として、この成年後見人が認知症の人の代わりに遺産分割協議を行うことになります。
特別代理人の選任
前述の通り、成年後見人が選任されれば、原則として、成年後見人が認知症の人の代わりに遺産分割協議を行います。
しかし、成年後見人がご家族の場合には、遺産分割協議にあたって、利益相反になる場合があります。例えば継美さんはお父様の相続で相続人なわけですが、同じく相続人である継美さんのお母様の後見人に継美さんが選ばれた場合などです。
この場合には、原則として成年後見人はそのまま遺産分割協議を行うことはできません。この場合には、遺産分割協議のためだけに、特別代理人を別途選任する必要があるのです。特別代理人の選任の要否は、成年後見人が家庭裁判所に、遺産分割の内容の案を元に相談されると良いでしょう。
自由な遺産分割は認められない
更に、成年後見人や特別代理人は認知症である被後見人の権利を守る役割ですから、「認知症の方が何も相続しない」という内容の分割協議や、認知症の方にとって不利になる遺産分割は認められないことがほとんどです。
本来、相続人全員が同意をすれば、どうやって遺産を分けても自由なのですが、相続人の中に認知症の人がいる場合には、遺産分割の内容にも制限がかかってしまいます。
考えていたよりも大変なことになりそうね・・。父の相続財産なんて、自宅不動産と少しの預貯金しかないのに。
もめていなくても遺言書を。
このように、相続人の中に認知症の方がいる場合には、残された人の負担がとても大きいものとなってしまいます。
このような事態を避けるためにも、財産を残す立場として、必ず公正証書で遺言書を作成し、さらに遺言執行者まで選任しておきましょう。遺言書が役に立つのは、「もめそうなとき」や「多額の財産がある場合」に限らないのです。
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