民法相続法改正。遺産分割前の預貯金の払い戻し制度、遺言書があったらどうなるか。

相続法改正

遺産分割前の預貯金仮払制度の創設

2018年に成立した改正相続法(民法 相続編)により新たにできた制度の一つに、遺産分割前の預貯金の仮払い制度があります。この制度は、遺産分割協議がまとまる前に、各相続人が被相続人の口座から一定の金額を引き出すことができる制度です。

この制度は、遺産分割協議が長引く場合に、葬儀費用や故人の借金返済など当面の資金需要に対応することを目的として創設されました。

ここでは、遺言書とこの制度の関係性についてみていきましょう。

遺言書と仮払い制度

預貯金の仮払い制度って、遺言書がある場合でも使えるのかしら。

制度上は使えますが、トラブルになる可能性があるので、遺言書がある場合に仮払いを受けるのはおすすめできません。

まず、私の意見をお伝えすると、本制度は、遺言書が残っている場合には使用しない方が良いでしょう。

そもそも遺言書の中でその預貯金を相続することになっている人は、本制度を遣わずとも、遺言書を使うことでスムーズに預金が引き出せますので、通常、本制度をあえて使用する理由はないはずです。

一方、遺言書でその預貯金を相続しないこととなっている相続人がこの制度を利用して払い戻しを受けた場合には、当然のことながら「もらい得」になるわけではなく、遺言書で定められた本来の権利者に返還する必要があります。返還に応じない場合には訴訟に発展する可能性もあり、トラブルや関係悪化の原因となります。

そのため、遺言書がある場合には本制度の利用を控えた方がよく、それでも何等かの事情により利用する場合には、他の関係者とよく話し合ったうえで利用すべきでしょう。

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