民法相続法改正。自筆証書遺言の方式緩和の趣旨は?

相続法改正

自筆証書遺言の方式が緩和されました。

2018年に成立した改正相続法(民法 相続編)により、自筆証書遺言の方式が緩和されました。

これまで、自筆証書遺言の要件として財産の詳細も含めてすべて自筆が求められていましたが、本改正により、財産目録については自書を要しないこととなったのです。これにより、本文については引き続き自書が求められるものの、財産目録についてはワープロを用いたり、又は代筆してもらったりすることが可能になりました。

では、なぜこのような改正がなされたのでしょうか。

方式緩和の趣旨とは

自筆証書遺言の方式が緩和された趣旨としては、やはり遺言書の制度を利用できる人をより増やし、そして無効となってしまう遺言書を減らすためではないかと考えられます。

例えば、多くの種類の財産を持っている人にとっては、各財産につき正確に遺言書に自書することは、かなり大変なものです。

これまでは、このような意思を表しているとは考えづらい部分についても自書が必要だったことから、遺言書の作成をあきらめた人や、また作成できても財産の表記ミスにより、遺言書が無効になってしまうなど望んだ内容とは異なる結果になってしまったケースも少なくなかったと思われます。

本改正により、財産目録については自書が不要となったことで、より遺言書が身近になり、そして誤った表記により無効になる可能性が少なくなることに繋がるのではないでしょうか。

方式緩和の遺言書は、いつから作成できる?

この改正は、2019年1月13日から既に施行されています。

ただし、施行日以前に作成された遺言書については、引き続き改正前の要件が求められますので、これ以前に作成された遺言書の財産目録がワープロ打ちであれば、これは従来通り無効になりますので、注意しましょう。

自筆証書遺言の作成は簡単?

財産目録がワープロ打ち等でも良くなったことで、作成の手間自体は少なくて済むようになりました。しかし、だからと言って安易にご自身一人で自筆証書遺言を作成することはオススメできません

なぜなら、まず一つ目の理由として、自筆証書遺言は、意外と押印箇所などの要件が多く、無効になってしまわないための方式違背には引き続き細心の注意が必要なためです。訂正方法なども、通常の書面のように二重線で消して上から押印、という方法ではありません。安易に作成すると、要件を満たさず無効となる危険性が高いので、注意しましょう。

もう一つの理由は、問題のない遺言書を作成するポイントは、実は「書き方」よりも、内容の検討の部分にあるためです。

問題のない遺言書を作成するには、

  • 遺留分は大丈夫か
  • 相続税は支払えるか
  • 譲渡所得税など余分な税金は発生しないか
  • 今後の状況変化に対応できるか
  • 本当に実現可能な内容か

など、多岐にわたる検討が必要です。この検討が漏れてしまうと、せっかく作成した遺言書が残された人を困らせてしまうことにもなりかねません。

そのため、あまり安易に一人で作成してしまうのではなく、専門家を活用するなどされることをお勧めします。

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