法定相続情報証明制度の創設
2016年7月5日、法務省が、来年度に「法定相続証明制度」を新設すると発表しました。
この情報を聞き、まず「いよいよ相続手続きの際に必要な、出生まで遡る除籍や原戸籍の取得の必要がなくなるんだろうか。」と感じたのですが、内容を見ると、どうやらそうではないようです。
法定相続情報証明制度の概要
2016年7月5日20:30現在確認できる情報によれば、新設が予定されている「法定相続証明制度」とは、戸籍や除籍、原戸籍などを一旦は集める必要があることは現在と変わりません。
ただ、これまでは、不動産の名義変更にも、銀行預金の解約にも、証券口座の名義変更にも、とにかくありとあらゆる相続手続きに「除籍や原戸籍などの原本一式セット」が必要であったものが、最初にこれらの原本セットを一度、登記所に出すだけで良くなる、ということのようです。登記所に「除籍や原戸籍などの原本一式セット」を出すことで、その内容を示す証明書が交付され、その後の銀行手続などはこの証明書で行うことになります。証明書の形式はわかりませんが、相続関係説明図のようなものを認証するイメージなのでしょうか。
法定相続情報証明制度で、相続人の負担は軽減されるのか
では、この制度ができることで、相続人の負担は軽減されるのでしょうか。個人的には、この制度は短期的には、むしろ相続人の負担を増やすのではないかと感じました。理由は2つあります。
そもそも、戸籍等を1セット集めることは変わらない
まず一つは、これまでも、不動産の名義変更や銀行手続、証券口座の手続きなど一連の相続手続きを行うために必要な除籍や原戸籍の原本は、1セットで事足りる事が多かったためです。一旦原本をすべて金融機関の窓口に提出する必要こそありましたが、多くの場合、そのまま原本が回収されてしまうわけではありません。コピーを取り、原本は返してくれる事がほとんどなのです。であれば、今回の制度開始後もどうせ1セットは集めるのであれば、相続人としての手間は一切軽減されていないのです。その最初の1セットを集める事が、大変なのですから。ただ、まあ、コピーを取る金融機関の手間は減るかもしれませんね・・。
相続手続きに時間が掛かるのではという懸念
もう一つは、本制度が始まることで、相続手続きに入ることのできるタイミングが遅れてしまうのではないかという懸念です。
相続手続きに使用する戸籍や除籍、原戸籍は、「父親が死亡し、配偶者と子2名が相続人」という比較的シンプルな場合でも、6~8通程度になります。また、転籍が多い場合や、相続人が兄弟姉妹である場合には、相続関係の証明にさらに多くの書類が必要になり、何十通となる事も少なくありません。登記所としてはこれらの書類を漏れがないかすべて確認した上で、法定相続証明書を交付するはずです。
今後すべての相続に対してこの確認作業を行うとなると、おそらくその場ですぐに交付してもらう事は不可能でしょう。不動産登記と同じくらいだとすれば、提出してから完了まで、1週間から2週間程度かかるわけです。この分相続手続きに要する期間が延びれば、無事に手続きが完了し、故人の銀行口座からお金を引き出す日はさらに後ろに延びてしまいます。これは、相続人にとっては、避けたい事ではないでしょうか。
マイナンバーとの連動を想定?
なお、相続人の負担が増えるのが「短期的に」と書いたのは、本制度は今後、相続戸籍とマイナンバーを連動させる準備なのかなと感じたためです。であれば、将来的には最初から除籍や原戸籍を集めることなく、手続きができるようになるのかもしれません。そうなれば、別の問題が生じる可能性は置いておいて、少なくとも手続きの負担自体は軽減につながると思います。
本制度については今後の動向にも注目していきますが、まずは現在わかっている情報で、感じたことをまとめました。参考になれば幸いです。
※本記事は、2016年7月に作成したものを、HPの移管・集約に伴い転載したものです。
※2020年11月追記:制度開始後しばらく状況を見ていましたが、やはりこの制度はあまり普及していないのが現状です。実際、ご相続手続きを代行する中では、むしろこの制度を利用したほうが手間が掛かるケースが多いと感じる案件が大半であるためです。より使い勝手が良くなれば変わってくると思いますので、引き続き動向を見守っていきたいと思います。
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