遺言書は、開封時を想定して作成しよう
遺言書を作成するときは、今現在のことだけを想定して作成するのではなく、ぜひ、開封時のことをイメージして、作成していただきたいと思います。
では、これはなぜでしょうか。
遺言書を見る時、書いた本人はこの世にいない
その理由は、遺言書を開けるタイミングにあります。遺言書をあけるのは、通常、遺言書を書いた人に相続が起きてしまったあと。つまり、遺言書を開けるときというのは、本人はもう、この世にはいないのです。
その状態で、例えば恨みや怒りなど、マイナスの感情の内容を書き残したら、どうでしょうか。残された側は、例えば誤解があったとしても、誤解を解くことはできない。謝ろうにも、謝れない。とにかく、解消しようのない後悔を、抱えることになるのです。
また、特にマイナスのことを書かなかったとしても、想いを何も記載しない遺言書も、少し考えものです。相続で財産を分け与えるというのは、他人同士でお金を分けるのとは異なり、「まったくの平等」などという状態は存在しません。これは、財産が現金のみではないこと、そして、相続人との関係性がそれぞれ異なることが理由です。
想いをのこさなければ、誤解を招くことも
例えば、何の想いの記載もなく、
長男には、評価額3,000万円の自宅不動産を相続させる、二男には500万円の預金を相続させる
と記載したら、どう感じるでしょうか。
実はこれ、感じ方は人それぞれ。もちろん残した側としては、残される側の幸せを願って、色々と検討した結果、遺言書を残したはずです。
しかし、長男からすれば、「なぜ自分は、換金できない自宅だけで、お金はすべて二男なのか」と不満に思うかもしれません。一方、二男からすれば、表面上の金額だけ見て、不公平だと不満に思う可能性もあるのです。
家族間の感情は非常に複雑で、特に相続が起きた後は、皆、少なからずストレスを受けます。その状態で、無機質な文面だけ見てしまっては、どのような感情になるか、予測できません。
一方で、例えば下記のような言葉が付されていたら、いかがでしょうか。
付言
私の亡きあと、太郎と次郎に迷惑をかけないよう、この遺言を残します。
長男の太郎には、私と同居をしてくれる中で、色々と世話をかけました。本当に感謝しています。太郎は、これからも家を守っていってください。
二男の次郎は、東京で難しい仕事を任されているということで、とても誇りに思っています。忙しい中、年に何度か帰ってきて顔を見せてくれて、嬉しかったよ。
私の財産は、自宅の不動産と、わずかな預貯金しかありません。太郎には、これからも自宅を守っていってほしい、でも、次郎にも何かを残してあげたい。これをどうやって分けようか、私なりにとても悩み、このような遺言を作りました。それぞれ不服に思うところもあるかもしれませんが、どうか理解してくれたらうれしいです。
太郎、次郎、今までありがとう。これからも、兄弟仲良く過ごしていってください。
付言に、正解はありません。しかし、このような想いが記されていると、単に財産の分け方のみが書かれた場合とくらべて、感じ方は大きく異なるのではないでしょうか。
せっかく残した遺言書で、わだかまりを残してしまわないためにも、遺言書はぜひ、「開封時」のことを想定して、しっかりと想いが伝わるように作成しましょう。
今はお元気なので、感謝の想いなどを遺言書の中に書くのは、気恥ずかしいかもしれません。でも、遺言書は、あなたの想いを伝える、最後のチャンスなのです。
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