ご家族が亡くなった後、自宅を整理していたら遺言書が出てきた。封がしてあったが、中身が気になって開けてしまった・・。
このように遺言書を勝手に開封すると、遺言書は無効になってしまうのでしょうか。
この記事では、遺言書の形式ごとの手続き方法や開封してしまった場合の問題点などについて詳しく解説します。遺言書を見つけたご家族の方はもちろん、これから遺言書を作ろうとされている方も参考としてみてください。
遺言書を見つけたらどうすれば良いか

ご家族が亡くなった後、遺言書を見つけたらどうすれば良いのでしょうか。まずは、遺言書を見つけた場合の対処法について知っておきましょう。
公正証書遺言の場合
その遺言が公正証書であった場合には特段の手続きは必要ありません。遺言書内に遺言書を実現する責任者である「遺言執行者」がいればその方に連絡をして、遺言執行の手続きを進めてもらうようにしましょう。
財産の名義変更など遺言執行の手続きには、お手元にある遺言書の「謄本」又は「正本」を利用します。
法務局で保管していた自筆証書遺言の場合
遺言書そのものではなく、遺言書を法務局に保管している旨の保管証を見つけた場合には、その法務局から「遺言書情報証明書」を取り寄せる必要があります。これを取り寄せるためには、遺言者の死亡から出生までさかのぼる戸籍謄本等や、相続人全員の戸籍謄本などが必要です。
この「遺言書情報証明書」をつかって、財産の名義変更などの遺言執行手続きをすることとなります。
なお、法務局から遺言書情報証明書を取得すると、法務局から他の相続人に対して遺言書を保管している旨の通知がなされますので、こちらも知っておきましょう。
自宅などで保管していた自筆証書遺言の場合
遺言書が自筆証書遺言であり、法務局での保管を利用していなかった場合には、検認を受けなければ遺言書を使った相続手続きには進めません。そのため、まずは家庭裁判所での検認の手続きを進めましょう。
検認とは、遺言書の偽造等を防ぐために、検認時点での遺言書の状態を記録するための手続きです。そして、遺言書に封がある場合には検認の場で開封することとされています。こうした決まりがありますので、検認の前に遺言書を勝手に開封してしまうことのないよう注意しましょう。
検認には、遺言者の死亡から出生までさかのぼる戸籍謄本等や、相続人全員の戸籍謄本などが必要です。
検認の日時は家庭裁判所から相続人全員に通知がされ、相続人であれば全員が検認の場に出席する権利を持ちますので、こちらも知っておいてください。
封のある自筆証書遺言は勝手に開封しても良いか

では、改めて封のある遺言書の開封ルールについて確認しましょう。
封のある遺言書は検認の場で開封する
封のある遺言書は、勝手に開封してはいけません。これは、遺言書などについて定められている民法に明記されています。
(遺言書の検認)
第千四条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
つまり、封のある遺言書を見つけたら勝手に開封せず、検認の場で開封する必要があるのです。
勝手に開封した場合の罰則
では、勝手に開封してしまった場合、罰則などはあるのでしょうか。これについても、民法で次のように定められています。
(過料)
第千五条 前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。
遺言書を勝手に開封してしまうと、5万円以下の過料という罰則の対象となります。
封のある自筆証書遺言を勝手に開封したら無効になるのか

では、封のある遺言書を勝手に開封した場合、その遺言書は無効になってしまうのでしょうか。
勝手に開封しても無効にはならない
結論をお伝えすれば、勝手に開封したしまったからといって遺言書が無効になるわけではありません。もし無効になるとするのであれば、遺言書の内容が自分にとって不利だと予想した人が勝手に遺言書を開けて無効にする、などということができてしまいます。
開封をしたことと遺言書の有効無効には関係がありませんので、この点も知っておきましょう。
勝手に開封するとトラブルの原因になることも
しかし、遺言書を勝手に開封するとトラブルの原因となり得ますので、絶対に検認の前に開封してしまうことのないように注意してください。
「もしバレても5万円の過料がかかる程度なら良いか」と安易に考えて開封してしまうと、他の相続人から遺言書の偽造を疑われてしまいかねません。もし裁判などにまで発展してしまうと、その解決にかなりの長期間を要する可能性もあるでしょう。過料がかかることよりもこの点の方がよほど大きな問題かと思いますので、安易に開封することのないようにご注意ください。
遺言書は公正証書で作成しておこう

このように、自筆証書遺言の場合には検認の手間が必要です。そのため、すぐに相続手続きに取り掛かることはできません。また、遺言書を偽造されてしまったり破棄されてしまうリスクも付きまといます。
こうしたことも踏まえ、遺言書を作成する際には、のこされたご家族がスムーズに手続きに入ることができ、偽造などのリスクもほとんどない公正証書で作成しておかれると良いでしょう。
この記事を書いた池邉からひとこと

封のある遺言書は勝手に開封してはならず、万が一勝手に開封すると他の相続人とのトラブルの原因になります。
法務局での保管制度を使っていない自筆証書遺言であれば、いずれにしてもまず検認を経ないことには手続きに進めませんので、まずは必ず検認を経るということを覚えておいてください。
検認の手続きを終えるには、どれだけ早くても相続開始から2~3ヵ月程度は必要です。なぜなら、検認を申し立てるための書類を集めるまでにまずは時間を要するうえ、申し立てをしてから検認の期日までも日数が開いてしまうためです。つまり、それまでは相続手続きを始めることができません。
自筆証書遺言にはこうした問題もありますので、やはり遺言書は公正証書で作成しておくと安心です。
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