遺産分割前の預貯金仮払制度の創設
新しくできた預貯金の仮払い制度って、どんなものなのかしら?
制度の概要をお伝えしますね。
2018年に成立した改正相続法(民法 相続編)により新たにできた制度の一つに、遺産分割前の預貯金の仮払い制度があります。
では、この制度はどのようなものなのでしょうか。
なお、ここでは、家庭裁判所の判断によらない場合の仮払いを前提に解説します。
預貯金仮払い制度の概要
まず、原則として、金融機関が相続の発生を知ると、その時点で亡くなった方の銀行口座は凍結されます。一旦凍結されると、その預貯金の行先を記した遺言書か、その預貯金を相続する人を定めた遺産分割協議書がなければ、お金を引き出すことはできません。
問題のない遺言書があったり、また遺産分割協議がスムーズにまとまれば良いのですが、協議が難航して長期にわたるとなると、例えば葬儀費用や故人の住んでいた家の片づけ、故人の借金返済など、当面の資金繰りに困る可能性があります。
こうした際を想定し、遺産分割協議がまとまる前であっても、一定の金額についてのみ、先に金融機関からお金を引き出せる制度がスタートしました。
それが、この「遺産分割前の預貯金の仮払い制度」です。
一定の金額とは
では、この制度により、遺産分割協議前に払い戻すことのできる金額は、いくらなのでしょうか。
これは、金融機関ごとに、下記の金額となります。
①150万円
②相続開始時のその金融機関の預金額×3分の1×払い戻しを受ける相続人の法定相続分
上記①又は②のうち、少ない金額
払戻を受けた金額分、その相続人の取り分は増えるのか
払戻をうけたからといって、当然ですが、その払い戻しをうけた人が「得」をするわけではありません。払い戻しを受けた分は、その人が既に遺産分割協議で取得したものとして、後の遺産分割協議で考慮されます。
キャッシュカードで勝手に引き出すのと何が違うのか
金融機関のキャッシュカードは、通常その規約により、本人しか使用できません。たとえ相続人であっても、本人のキャッシュカードを使ってお金を引き出すことは、本来、違法です。
一方、この制度は、法律で認められた制度です。
遺言書がある場合の注意点
この制度を利用しようとする場合、遺言書の有無にはよく注意をしてください。仮に、払い戻しを受けようとする人が、遺言書でそもそも預貯金を相続できない事となっていた場合、払い戻しを受けてしまった預貯金は、本来の受遺者等へ返還しなければなりません。
返還に応じない場合には、訴訟を提起され、トラブルとなる可能性が高いでしょう。そのため、遺言書がある場合には、この制度の利用はお勧めできません。
その他制度利用時の注意点
新たにできた預貯金の仮払い制度ですが、遺言書がないケースであっても、無闇に利用することはオススメできません。遺産分割協議が複雑になる可能性があるほか、各相続人が「我先に」と仮払いを受けることで、お互いに疑心暗鬼になり、遺産分割協議がよりまとまりににくくなる懸念があるためです。
本制度の利用自体には他の相続人の同意は不要で、かつ資金の利用目的も問われないとは言え、利用する際にはやはり、葬儀費用や故人の家の片づけ、故人の借金返済など、故人様に関連した支出の用途にとどめ、そのうえで事前に各相続人に伝えた方が良いでしょう。
あまり安易には使わない方がよさそうね・・
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