遺言書の日付、「吉日」が無効な理由とは
遺言書を書く際の要件として、日付の表記は必須である旨は、遺言書について定められている民法にしっかりと記載されています。そのため、日付の特定ができない「吉日」などの記載では、遺言書としての要件を満たさないこととなり、その遺言書自体が無効です。では、なぜ遺言書の中で、日付がそれほど重要視されるのでしょうか。
これには、主に二つの理由があると考えます。
2通以上の遺言書があった際の判断材料
一つは、遺言書の前後を判断する、重要な基準となるためです。
遺言書は、一度書いても、何度でも書き換えが可能であり、原則として後の日付のものが、前の日付のものに優先します。
たとえば、2016年8月1日の日付の記載がある、「自宅の土地建物は二男に相続させる」という遺言書と、2016年8月25日の日付の記載がある「自宅の土地建物は長男に相続させる」という遺言書があった場合、自宅土地建物を相続によって受け取るのは、後の日付の遺言書に記載のある長男、ということです。
この前後の判断のため、日付は遺言書にとって、非常に重要なのです。
本当に本人が書いたのかどうかの判断材料
もう一つは、本人が本人の意思で書いたのかどうかの判断材料となるためです。仮にその遺言書の日付が、本人が認知症と診断された後のものであるような場合には、その遺言書は本当に本人の意思と言えるのか、疑問が残ります。その他にも自筆証書遺言は、本当に本人が書いたのか、本人の意思なのか、という点はしばしば問題になるため、その判断材料として、日付は非常に重要なのです。
こういった事を知った上で、ご自身で遺言書を作られる際には、日付などについても漏れのないよう、しっかりと記載するようにしましょう。
要件を満たしていても、自筆証書遺言では不安が残る
また、日付をしっかり記載していたとしても自筆証書遺言である以上、「本人が、本人の意思で書いたのか」という点は、しばしば争いのもとになります。
実際に本人が書いたものだとするのであれば、筆跡鑑定等を行えば判明するでしょうが、そういった証明はすぐにできるものではなく、その間相続手続きが進められないこととなってしまいます。
また、自筆証書遺言は自分ひとりで作成するケースが多いため、本人の意思で作成したことの証明も困難です。
残されたご家族の安心のため、自筆証書ではなく、公正証書遺言で作成することも、一つ検討されると良いでしょう。
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