遺言書とエンディングノートの違い
終活ブームに伴って、「エンディングノート」という言葉を聞く機会も増えたのではないでしょうか。実際に書いてみた、という方もいるかもしれません。
しかし、エンディングノートのみで終活を終えるのは、とても危険です。ここでは、エンディングノートのみでは終活が終えられない理由、エンディングノートと遺言書の違いについて、解説します。
エンディングノートには、法的拘束力はない
エンディングノートは、終活のツールとして大変便利です。自分の財産を振り返り、この後の人生をどう生きていくか検討すること、お世話になった人のことや嬉しかったできごとを思い返すこと、そして、自分の財産について「どこに何があるか」という整理や、自分に万が一のことがあったあと、家族が、財産の所在がわからず困る、という事態を防ぐことなどに、役立つでしょう。
しかし、エンディングノートには一つ、大きく欠けている点があります。それは、法的な拘束力です。
例えばエンディングノートの中で、「自宅土地建物は、今後も家を継いでいってくれる長男にもらってほしい。」などと書いても、これは、ただ単に自分の日記帳に書いたのと何ら変わりません。残念ながら、残された家族がこのとおり実現するかどうか、縛ることはできないのです。
また、法的効果がないのですから、エンディングノートをもとに、実際に不動産の名義変更などをすることもできません。
エンディングノートと遺言書の併用がオススメ
ではどうすべきかと言えば、これはやはり、エンディングノートとは別に、遺言書を作成しておくことです。遺言書は、民法という法律でその作成方法などがしっかりと定められており、原則としてエンディングノートへの記載では、遺言書としては認められないのです。
効果的な方法としては、まずエンディングノートで財産の整理や、人生と想い出の棚卸しをします。その中で、財産についても、誰に何を渡したいか、と検討していくと良いでしょう。誰に何を渡したいかが決まったら、その内容を、万が一の際、スムーズに実現するために、遺言書を作成しておいてください。
エンディングノートだけで希望を書くのはNG
エンディングノートのみに希望を書いて、遺言書を残していない場合には、争いに発展してしまう危険性もあります。
エンディングノートにのみ財産の行先を書き、一方で遺言書を作成するといった法的な整備をしていない場合、相続人が故人の遺志を汲んで、「じゃあ、遺言書はないけど父の想いを尊重しよう」と合意するケースも、確かにあるかもしれません。しかし、見方によっては「その遺志は中途半端であったので、従う必要はない」と映ってしまう場合もあるのです。「本当に実現したいなら、遺言書を残しているはずだ。エンディングノートはメモに過ぎないので、最終的な父の遺志とは限らない」、と。
この判断が、相続人の中で異なるような場合、争いとなってしまうのです。
エンディングノートを書く際には、エンディングノートは法的拘束力がない、ということをしっかりと認識された上で、残された家族が判断に困るような内容は、書かないようにしましょう。
そのうえで、財産の分け方については、きちんと遺言書という形で残しておかれることをお勧めします。
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