配偶者居住権の創設
2018年の民法改正により創設された配偶者居住権。ここでは、配偶者居住権のメリットについて解説します。
配偶者居住権とは
配偶者と同居していた被相続人所有の自宅は、これまで、「自宅の建物」として誰が相続するかを検討するしかありませんでした。
配偶者居住権とは、「自宅の建物」を、「土地建物の所有権」と、「配偶者が亡くなるまでその建物に住む権利(=「配偶者居住権」)に分けて相続することができるようになる制度です。
これにより、より柔軟な遺産分割や遺言が可能となります。
配偶者居住権が役立つモデルケース
太郎さんの悩み
太郎さんには、前妻との子である一郎さんがいます。一郎さんはすでに実家を出て、一郎の妻や子と、実家近くの賃貸マンションで暮らしています。
太郎さんは、一郎さんが実家を出たのちに花子さんと再婚をし、太郎さんの所有する家で二人で余生を楽しんでいます。
花子さんにも子がありますが、太郎さんとの再婚時にはすでに独立しています。また、一緒に暮らしたことがあるわけでもない一郎さんと花子さんにも、太郎さんと花子さんの子にも特に親子という感覚はなく、年末年始など帰省時に顔を合わせる程度です。
そのような状況の中、太郎さんは、次のように考えています。
「自分の亡きあと、花子には安心してこの家に住んでいってほしい。でも、花子も亡くなった後には、この家は花子の子ではなく、自分の子である一郎に渡したい。何か良い方法はないだろうか。」
従来の解決法
このようなケースは、晩年での再婚が珍しくはない昨今、増えているのではないでしょうか。
こうしたとき、従来の解決法は、下記しかありませんでした。
- 自宅を、遺言書で花子に相続させる。そのうえで、花子にも、その自宅土地建物を一郎へ遺贈する旨の遺言書をつくってもらう。
- 自宅を、遺言書で一郎に相続させる。そのうえで、一郎に、花子が亡くなるまではその家に無償で住まわせるよう、約束させる。
- 信託を活用する。
しかし、これらにはそれぞれデメリットがあります。
1の場合には、花子がいったん指定の内容の遺言書を作成したとしても、その後書き換えないことまでは拘束できない点がリスクです。太郎には知らせず、一郎ではなく自分の実子などを受遺者とする遺言書に、こっそり書き換えられてしまえば、どうしようもありません。
2の場合には、約束を反故にされる可能性があります。実際に太郎が亡くなったあとで、一郎が花子を追い出してしまったり、賃料を請求しだすかもしれません。
3の場合には、費用が比較的高額になる可能性が高いでしょう。また、信託はまだまだ新しい制度ですから、実際に運用してみた結果のトラブル事例が出そろっていません。これも、大きなリスクです。
配偶者居住権のメリット
そこで登場したのが、配偶者居住権です。前述のケースで、配偶者居住権の施行後は、下記のような遺言や遺産分割が可能になります。
・自宅の土地建物の所有権は、長男の一郎に相続させる。
・自宅の土地建物に、亡くなるまで無償で住む権利(=「配偶者居住権」)は、妻の花子に遺贈する。
これにより、太郎さんの望んだ状態、すなわち、「自分の亡きあと、花子には安心してこの家に住んでいってほしい。でも、花子も亡くなった後には、この家は花子の子ではなく、自分の子である一郎に渡したい。」という希望が、かなえられるのです。
遺言書の作成は、専門家を活用しよう
とはいえ、配偶者居住権にはデメリットも存在します。例えば、配偶者居住権は売却できないというのは、その1つでしょう。つまり、配偶者がその後1人での生活に不安を感じたとしても、「自宅不動産を売却し、その対価を元に施設へ入所する」という選択肢は取れないわけです。
相続のルールは多岐にわたり、また大幅な改正もあったことから、全貌を把握することが非常に難しくなっています。無理に自身で遺言書を作成したり、相続業務の経験の浅い専門家へ依頼してしまうと、取返しのつかないリスクを残してしまう事にもなりかねません。
遺言書を作成しようとする際はぜひ、相続を専門としている専門家へご相談ください。とても大切なことですので、いくつかの事務所へ相談され、信頼できる専門家をしっかりと見極められたうえでご依頼されることを、強くお勧めいたします。
こんな時は、無料相談をご利用ください
弊所では、ご来所いただく場合、初回無料にてご相談をお受けしております。下記のような方は、お気軽に無料相談をお申し込みください。
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