遺言書は、法的要件だけ満たせば良い?
遺言書をつくるとき、やはり多くの人がまず気にするのは、法的要件。確かに遺言書には形式上の要件も多く存在し、その要件を満たさなければ、せっかくの遺言書が無効になってしまいます。
しかし、法的要件はあくまでも、遺言書が遺言書であるための最低限の要件でしかありません。実際に相続が発生し、スムーズに手続きをするため、また、無用な揉め事を防ぐためには、法的要件を満たすのみでは不十分です。
ここでは、遺言書の見直しのうち、「財産の特定は明確か」という点に焦点をあて、解説していきます。
遺言書と、財産の特定
遺言書を作る際、注意して頂きたいポイントの一つとして、財産の特定があります。財産の特定が曖昧だと、実際に手続きをする際に滞ってしまったり、場合によってはその財産を受け取る人だけではなく、他の相続人の捺印書類まで必要になるなど、せっかくの遺言書の効果が半減してしまいます。
例1:不動産
たとえば、自宅の土地建物のことを日常会話ではまとめて「家」と呼ぶこともあるかと思いますが、遺言書で「家は長男に相続させる」と書くと、では土地はどうなんだとか、車庫に別の家屋番号がついている場合に、では車庫はどうなんだといった問題が生じる可能性があります。
そのため、遺言書に不動産のことを記載する際には、登記簿謄本通りに「所在」「地番」「地積」「地目」といった、その不動産を特定するための情報をしっかり記載しておくと良いでしょう。
例2:預貯金
預貯金については通常金額まで記載する必要はなく、「三菱UFJ銀行 〇〇支店 普通預金 口座番号1234567」といったように、その預金を特定することのできる情報を記載すれば足ります。
しかし、たとえば「私のお金は全部長女に相続させる」といた書き方をした場合、果たして預金は「お金」に含めて長女に払い戻せばよいのかどうか、微妙なところでしょう。厳密にいえば預貯金は「お金」そのものではなく、銀行に預けたお金を返してもらえるという意味の「債権」であるためです。
銀行は各金融機関内のルールもあり、実は不動産よりもよほど厳格な記載を求められがちです。他の解釈もできる遺言書をもとに預金を払い戻してしまうことで、他の相続人から訴えられるリスクを極力減らしたい、というのが本音でしょう。
財産の特定は、誰がどう見てもわかるように
どの財産を記載するにしても、ポイントは一つ。「誰がどう見ても、どの財産のことを指しているのかわかるように書く」ということです。
曖昧な記載では、手続きに支障が出たり、最悪の場合は訴訟等を経なければ手続きができなかったりするおそれがあります。疑義を残してしまわないよう、しっかりと特定できるように記載しましょう。
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