動画で解説
ATMでの預貯金引出
父が亡くなったのだけど、兄ともめていて・・。とりあえず、暗証番号はわかるので、ATMでお金をおろして良いかしら。
いえ、暗証番号がわかるからといって、勝手にお金を引き出すのはやめた方が良いです。
亡くなった人の銀行口座は、金融機関がその人が亡くなった旨を知った時点で凍結されます。
なお、凍結により銀行にお金が取られてしまうわけではなく、その後遺産分割協議がまとめれば、所定の手続きを踏むことにより、解約してお金を引き出したり、名義変更をしたりすることができるようになります。凍結は、遺産分割協議がまとまるまでの一時的な措置だと考えてください。
では、キャッシュカードが手元にあり、暗証番号もわかるからといって、凍結前に故人の口座からお金を引き出して良いのでしょうか。
結論をお伝えすると、これはお勧めできません。その理由を見ていきましょう。
1、そもそも、規約違反
キャッシュカードは原則として、各金融機関の規約により、本人しか利用できないこととなっています。たとえ家族であっても、本人以外が使用することはそもそも想定されていません。
金融機関との間で大きな問題になるケースは今のところ少ないとはいえ、今後も見逃されるという保証はどこにもありません。
2、トラブルの原因に
また、勝手に預金を引き出すことで、他の相続人から「お金を隠した」等と主張され、トラブルになる可能性もあります。
なお、当然ですが、勝手にお金を引き出した人が得をするわけではなく、その分は考慮したうえで遺産分割協議を行うことが通常です。
また、引き出したお金を返還しない場合には裁判になったり、場合によっては、横領の罪に問われる可能性さえあるでしょう。
預貯金仮払い制度の活用を
2018年に成立した改正相続法(民法 相続編)により新たにできた制度の一つに、遺産分割前の預貯金の仮払い制度があります。この制度は、遺産分割協議がまとまる前に、各相続人が被相続人の口座から一定の金額を引き出すことができる制度です。
遺産分割協議が長引く場合に、葬儀費用や故人の借金返済など当面の資金需要に対応することを目的として創設されました。
当面の資金需要のためという目的であれば、キャッシュカードで勝手にお金を引き出すのではなく、この制度を利用し、正式な手続きでお金をおろすようにしましょう。
ただし、この制度も、むやみに利用することはオススメできません。遺産分割協議が複雑になる可能性があるほか、各相続人が「我先に」と仮払いを受けることで、お互いに疑心暗鬼になり、遺産分割協議がよりまとまりににくくなる懸念があるためです。
本制度の利用自体には他の相続人の同意は不要で、かつ資金の利用目的も問われないとは言え、利用する際にはやはり、葬儀費用や故人の家の片づけ、故人の借金返済など故人様に関連した支出の用途にとどめた方が良いでしょう。
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