遺言の検認とは?検認が必要な遺言の種類も解説

遺言書の基本

「亡くなったご家族が遺言書を残していた。さっそくこの遺言書を銀行に持って行って預金を解約しよう!」
そう考える方もいらっしゃるかもしれませんが、ちょっと待ってください。

実は、のこっていた遺言書の種類によっては、すぐに相続手続きへと移行することはできません。先に家庭裁判所での検認手続きを経なければ、その遺言書を相続手続きに使うことができないためです。

この記事では、遺言書の検認とはどのような手続きなのかを解説するとともに、検認が必要な遺言書と不要な遺言書についてもお伝えします。

遺言書の検認とは?

遺言書の検認とは、家庭裁判所で行う遺言書の開封式のような手続きです。

検認が必要な遺言書が残っていた場合には、まず、この検認手続きを行わなければなりません。これは、相続について定めている民法にも明記されています。

(遺言書の検認)
第千四条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする
2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。

実務上も、検認が済んだことの証明である「検認済証明書」が添付されていなければ、その遺言書を使って銀行や法務局などでの相続手続きを行うことはできません。
検認が必要な遺言書があった場合には、とにもかくにも「まずは検認!」です。

検認は何のために行うのか

遺言書の検認は、何のために行う手続きなのでしょうか。
家庭裁判所の説明がわかりやすいので、次にそのまま引用します。

相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして,遺言書の偽造・変造を防止するための手続

家庭裁判所HP https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_17/index.html

遺言書は、偽造をされてしまえば大問題です。そのため、早期に検認を経ることでその時点での遺言書の状態を保存して、以後の偽造や変造を防ぐ役割があります。

封のある遺言書は検認の場で開封する

遺言書が封印されている場合には勝手に開封してはならず、検認の場で開封しなければなりません。
検認の前に勝手に開封してしまうと、5万円以下の過料が課される可能性があります。

また、他の相続人から遺言書の偽造などを疑われてしまうことにもなりかねませんので、封のある遺言書は検認まで開封しないようにしましょう。

検認までの流れ・手順

ここでは、検認までの流れを簡単にご紹介します。
遺言の検認は家庭裁判所で行うのですが、いきなり家庭裁判所へ行ってその場で検認が完了するわけではありません。検認をするためには、まず必要書類を準備をした上で検認の申し立てをする必要があります。
では、検認までの流れを見ていきましょう。

※行政書士は裁判手続きである検認手続きをすることができません。弊センターへご依頼いただいた相続手続きにおいて検認手続きが必要となった場合には、連携をとっている司法書士にて申し立て等の手続きを行います。

ステップ1:遺言書の検認申し立ての必要書類を準備する

まず、検認を申し立てるための必要書類を準備します。
申し立てに必要な書類は原則として次のとおりです。ただし、状況によってはこれら以外の書類が必要になることもありますので、自分で手続きをする場合にはあらかじめ家庭裁判所へ確認してください。

必ず必要となる書類

遺言書の検認で必ず必要となる書類は、次のとおりです。

  • 申立書
  • 遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺言者の子(及びその代襲者)で死亡している方がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

父母・祖父母等が相続人となる場合に追加で必要となる書類

亡くなった人(「被相続人」といいます)の父母や祖父母など直系尊属が相続人である場合には、上記にくわえて次の書類も必要となります。

  • 遺言者の直系尊属で死亡している方がいる場合、その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

相続人が遺言者の配偶者のみの場合や兄弟姉妹やおいめいが相続人となる場合などに追加で必要となる書類

相続人が配偶者のみである場合や被相続人の兄弟姉妹やおいめいが相続人となる場合、相続にがいない場合には、次の書類も必要となります。

  • 遺言者の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
  • 遺言者の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
  • 遺言者の兄弟姉妹で死亡している方がいる場合には、その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
  • 代襲者としてのおいめいで死亡している方がいる場合、そのおいめいの死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

ステップ3:検認の申し立てをする

必要書類が揃ったら、家庭裁判所へ申し立てを行います。
申し立て先は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

ステップ4:期日が決まり家庭裁判所から通知がされる

申し立て後、検認の日時が決まったら、家庭裁判書から法定相続人全員に検認期日が通知されます。
たとえば「この相続人には知らせたくないから通知を送らないで欲しい」など、申立人が知らせる相手を指定することはできません。

ステップ5:遺言書の検認当日

決まった期日に、申し立てをした人が検認をする遺言書を持って家庭裁判所へ出向き、検認が完了します。
なお、申立人は遺言書を持って行くという大切な役割がありますので必ず出向く必要があるものの、他の法定相続人の中に検認当日に来れない人がいたとしても、検認の効力に影響はありません

検認が必要な遺言不要な遺言

検認は、すべての遺言で必要となるわけではありません。
遺言の方式によっては検認は必要ありませんので、検認が必要な遺言書と検認が不要な遺言書をそれぞれ確認をしておきましょう。

検認が必要な遺言書

次の遺言書は、検認手続きが必要です。

法務局での保管制度を使っていない自筆証書遺言

2020年7月より自筆証書遺言の法務局での保管制度がスタートしています。しかし、保管制度が始まった後であっても、この保管制度を使うかどうかは遺言者の自由であり、従来どおりご自宅などで自筆証書遺言を保管することも可能です。

この法務局での保管制度を使わなかった自筆証書遺言については、検認が必須だと考えてください。この遺言は、検認を経ないとその遺言を使って財産の名義を変えたり預金を変えたりすることはできません。

相続が起きたら、速やかに検認の申し立てをするようにしましょう。

検認が不要な遺言書

次の遺言書は、検認手続きが必要ありません。

公正証書遺言

遺言書が公正証書遺言であった場合には、検認の手続きは必要ありません。公正証書遺言の原本は公証役場で保管されており、遺言書の偽造や変造が行われる可能性はほとんどないためです。
検認が必要ありませんので、遺言書の謄本や正本がお手元にあれば、その謄本や正本を使ってすぐに相続手続きに入ることができます。

法務局での保管制度を使った自筆証書遺言

自筆証書遺言であっても、法務局での保管制度を使っていた場合には検認は不要です。法務局で保管されている自筆証書遺言も、偽造や変造の危険性はないためです。

ただし、この場合には公正証書遺言とは異なり、すぐに手続きに入れるわけではありません。なぜなら、まず法務局からその保管されている遺言に関する「遺言書情報証明書」を取得する必要があるためです。この遺言書情報証明書を取得するには、その遺言書を書いた被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍や除籍のほか、相続人全員の戸籍謄本や住民票なども提出する必要があります。

さらに、遺言書情報証明書を相続人の1人が請求すると、法務局から自動的に他の相続人に対し遺言書を保管している旨の通知がなされることも知っておく必要があるでしょう。

検認証明書は遺言書が有効とのお墨付きか

検認が済むと、その遺言書には印の押された検認済証明書が添付されます。
では、検認済証明書は、その遺言が有効であることのお墨付きだと考えてよいのでしょうか。

検認済証明書は有効とのお墨付きではない

検認済証明書は、その遺言書が有効だとのお墨付きではありません。

検認は前述のとおり、その時点での遺言書の状態を保管する目的で行う手続きです。この検認の場では、遺言書の有効無効の判断は一切なされません

たとえば、長男が被相続人である父の名前をかたって勝手に作成した遺言などは、無効です。
しかし、検認の場では遺言の筆跡鑑定がされるわけでもなければ、他者が勝手に書いたのではないかなどと詰問されるわけでもありません。
このような無効な遺言であっても検認を受けることはできますし、検認済証明書も発行されます。
そのうえで、たとえば二男など他の関係者が「この遺言は無効だろう」と考えるのであれば、それは検認とは別途そ、の有効性を争う裁判を申し立てる必要があります。

検認では遺言の有効無効の判断はされず、検認済証明書はその遺言書が有効であるとのお墨付きではありませんので、注意しましょう。

この記事を書いた池邉からひとこと

のこっていた遺言書が検認が必要なものであった場合には、すぐに相続手続きに入ることはできません。まず、検認を行う必要があるためです。

そのため、検認が必要な場合には、相続手続きに入るまでに早くても2か月程度はかかると考えたほうがよいでしょう。申立てに必要な書類を集めるまでに1か月前後はかかることが多いほか、その後検認期日までには他の相続人への通知期間なども必要となるためです。また、家庭裁判所の混み具合によってはさらに遅くなる可能性もあります。

一方、公正証書遺言であれば検認は必要ありませんので、相続が起きたらすぐに手続きをすすめることが可能です。

遺言書を作成する際はぜひ、相続が起きた後の手続きも知った上で、本当に自筆証書遺言でよいのか、やはり公正証書遺言にするのか検討していただきたいと思います。

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