生命保険の契約をしたあとで、やはり受取人を変更したくなることもあるかと思います。では、遺言書で生命保険の受取人を変えたいと書いた場合、その記載は有効なのでしょうか。
この記事では、遺言による生命保険の受取人変更につき詳しく解説します。
遺言で生命保険の受取人変更は可能か

従来、遺言書で生命保険契約の受取人変更をすることはできませんでした。
しかし、平成20年5月30日に成立し平成22年4月1日より施行されている保険法の改正により、現在は遺言で生命保険の受取人を変えることができるようになっています。
その根拠は、次のとおりです。
(遺言による保険金受取人の変更)
第四十四条 保険金受取人の変更は、遺言によっても、することができる。
2 遺言による保険金受取人の変更は、その遺言が効力を生じた後、保険契約者の相続人がその旨を保険者に通知しなければ、これをもって保険者に対抗することができない。
遺言で受取人変更ができない生命保険とは
前述のとおり、遺言で生命保険の受取人変更ができるようになりました。
しかし、すべての保険契約が遺言で受取人を変えられるわけではありません。次のような場合には、遺言に書いても受取人の変更が認められませんので注意が必要です。
- 受取人変更をしようとする保険が、平成22年4月1日より前(改正保険法の施行前)に締結された保険契約である場合
- 約款などで受取人の限定があり、その限定された受取人以外へ変更することとした場合
このように遺言に書いても受取人が変更できない場合もありますので、遺言で受取人を変更しようとする際はあらかじめ保険会社へ相談されることをおすすめします。
遺言で生命保険の受取人変更をすることの問題点

個人的には、よほど生命の危険が差し迫り時間的な猶予がない場合をのぞき、保険契約の受取人を遺言で行うことは推奨していません。
生命保険契約の受取人変更をしたいのであれば、遺言で書かずとも直接保険会社へ連絡をして、受取人を変えておいたほうが確実です。
その理由は、次の2点にあります。
生命保険によっては遺言に書いても受取人変更はできない
1つ目の理由は、前述のとおり、保険によっては遺言に受取人を変更したいと書いても変更の効力が生じない点です。
ご本人が亡くなってから遺言での受取人変更が無効だと判明しては、後悔してもしきれません。
もともとの受取人に生命保険金が支払われてしまう可能性
前述した条文でも記載のとおり、遺言での受取人変更が効力を生じるためには、被保険者たる本人が亡くなってから遺言で受取人が変更されている旨を保険会社へ通知する必要があります。
もしこの通知より先に変更前の受取人がすでに保険金を受け取っていた場合には、変更後の受取人はもはや保険金を手にすることはできません。
この点も、遺言で生命保険の受取人を変更する非常に大きなリスクと言えるでしょう。
遺言で生命保険の受取人変更をする意味がある場合

ここまで見てきたとおり、遺言書での生命保険金受取人変更はリスクが高いため、基本的にはおすすめしていません。
しかし、遺言書で生命保険金の受取人変更を行う意味のある場合も存在します。その場合とは、次のとおりです。
第二希望の受取人を定める場合
生命保険契約では通常、第一希望の受取人しか指定できません。
しかし、第一希望の受取人が被保険者よりも先に亡くなってしまった場合に備え、第二希望の受取人を指定したい場合もあるでしょう。
例えば、生命保険金の受取人を配偶者である「なごみ花子」としたものの、花子さんがご自身より先に亡くなった場合には長男の「なごみ太郎」を受取人としたい場合などです。
この場合には、遺言書で生命保険金の受取人を指定しておく意味があります。
その記載例は、次のとおりです。
第〇条 遺言者の死亡以前に遺言者の妻 なごみ花子(昭和30年1月1日生)が死亡した場合には、遺言者を保険契約者及び被保険者としてX生命保険株式会社と平成28年6月30日に締結した生命保険契約(保険証券番号1234567890)について、その生命保険金の受取人を遺言者の長男 なごみ太郎(昭和60年2月2日生)に変更する。
もちろん、万が一花子さんが先に亡くなってしまった場合には、その時点で保険会社へ連絡をして契約上の受取人を変更することも選択肢の1つです。
しかし、その時点で契約者ご本人が重い認知症などとなっていれば、もはや受取人の変更は困難でしょう。そうした場合に備え遺言書内で生命保険金の受取人変更を記載しておくことは、検討の余地があるものと思われます。
この記事を書いた池邉からひとこと

遺言書で生命保険契約の受取人変更をすることは可能です。しかし、相続開始後の手続きがいわゆる「早い者勝ち」のようになってしまうリスクは避けたいところでしょう。
そのため、可能であればやはり直接保険会社との契約で受取人を変えておくことが望ましいといえます。
改正があったからといって、改正で新たにできるようになった方法を取ることが必ずしも得策というわけではないのです。無理に新たな制度を使うのではなく状況に合わせて最適な方法を選択しましょう。
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