遺言で債務の負担者を指定することはできる?常滑半田の遺言作成相談

遺言書の基本

事業を承継する長男に事業に関する債務を負担させたいなど、債務を特定の相続人へ継がせたい場合もあるでしょう。

では、遺言で債務の負担者を指定することはできるのでしょうか。この記事では、遺言での債務承継につき詳しく解説します。

債務は相続するのか

相続人は、原則として亡くなった人の債務を承継します

これは、民法で次のように記載されていることからも明白です。相続でもらえるのは、プラスの財産だけではないのですね。

(相続の一般的効力)
第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

相続人である以上、被相続人の債務を「私は父とは長年会っていなかったし、関係ありません。私に父の借金を請求されても困ります。」とは言えないのです。

遺言で債務の負担者は指定できる?

では、遺言で債務の負担者を指定することはできるのでしょうか。例えば、次のような記載です。

「遺言者である なごみ一郎 の債務は、すべて私の長男である なごみ太郎(昭和60年1月1日生)に承継させる。」

この記載が有効かどうかの結論は、少し複雑です。

遺言での債務の負担者の指定は債権者には効力無し

遺言での債務の負担者の指定は、実は債権者(銀行など、お金を借りている相手)に対しては効果がありません。

例えば前述の遺言があったとしても、銀行は被相続人の配偶者や二男、長女に対しても「一郎さんに貸していたお金を返してください」と請求することができるのです。

そして銀行が各相続人に対して請求できる額は、遺言の内容に関わらずそれぞれの法定相続分となります。

例えば一郎さんの相続人は、妻と長男の太郎さん、二男、長女であり、借金の額が900万円であったのであれば、妻に450万円、長男、二男、長女にはそれぞれ150万円の請求ができるということです。

遺言での債務の負担者の指定には意味がある

とは言え、遺言への債務の負担の記載がまったく意味がないわけではありません。その理由は、次の2点です。

  1. 通常は、遺言で指定された債務の承継者に請求がされることが多いため
  2. 相続人間では遺言が優先されるため

では、1つずつ見ていきましょう。

債権者が債務の承認をすることはできる

遺言があっても、債務は法定相続分で分割されてしまうのが原則とはいえ、銀行側が遺言の内容を承認し、遺言のとおり太郎さんに900万円全額を請求することはできます

現実的には、例えば長男が被相続人の事業とともに債務を承継しその事情の業績に問題がない場合や、長男がローンの残った賃貸用不動産とともに債務を承継した場合などには、銀行は長男に対し債務の返済を請求することになるでしょう。

一方、長男の資力に不安がある場合には、原則どおり法定相続分で返済を迫るものと思われます。

遺言での債務の負担者の指定は相続人間では有効

遺言での債務の負担者の指定は、実は相続人間では有効です。

例えば、前述の一郎さんの遺言があったにも関わらず、銀行が二男に150万円を請求し、二男は実際に銀行に各150万円を返済したとします。

この場合、二男は遺言で債務の負担者とされた長男に対して、「あなたが負担すべき債務を支払ったのだから、私に150万円を返してください」と請求をすることができるのです。

この点でも、遺言での債務の負担者の指定には意味があります。

なぜ遺言で債務の負担者を指定できないか

結果的に二男は長男に返済したお金を請求できるのであれば、そもそも始めから銀行が長男に請求すれば良いと感じるかもしれません。

確かに、長男がすぐに支払えるのであれば、結果的に大した違いはないでしょう。しかし、この違いは、長男にお金がない場合に表れます。

仮に遺言での債務の負担者の指定が債権者にも効力を生ずるとすれば、例えばほとんど財産を持っていない長男に債務を承継させて、その後長男が自己破産をするといったような債務逃れができてしまいます。これでは、銀行は安心してお金を貸すことができません。

そのため、債権者はまず相続人それぞれに返済を請求できるとしたうえで、仮に長男にお金がない場合のリスクは他の相続人に負ってもらう形になっています。

前述の例で、二男が返済した150万円の負担を長男に請求したところで、長男にお金が無ければ、困るのは銀行ではなく二男だということです。

債務を承継したくない場合はどうすれば良いか

では、被相続人の債務を承継したくない場合にはどうすれば良いのでしょうか。例えば、「私は父とは長年会っていなかったし、関係ありません。私に父の借金を請求されても困ります。」といった場合です。

相続放棄をする

被相続人の債務を承継したくないのであれば、確実な方法としては相続放棄をするほかありません。相続放棄をすれば、その人ははじめから相続人ではなかったこととなりますので、被相続人の債務も承継せずに済むのです。

相続放棄をする際には、次の点に注意して行ってください。

プラスの財産も一切相続できなくなる

相続放棄をすると、マイナスの財産のみならずプラスの財産も一切相続できなくなります。

「預金はほしいけど、借金は承継したくない」といった都合の良いことはできませんので、注意しましょう。

期限が短い

相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に行わなければなりません。

相続が起きてからの3か月は思いのほかあっという間に過ぎてしまううえ、この期間内に必要な書類を準備する必要もありますので、相続放棄を検討している場合には早めから準備に取り掛かるようにしましょう。

相続人が次順位にうつることがある

その順位の相続人が全員相続放棄をすると、相続の権利が次順位の相続人に移ります

例えば、第一順位の相続人である子が全員相続放棄をした場合、第二順位の相続人である両親などの直系尊属や、第三順位の兄弟姉妹や甥姪が相続人になるのです。

子が全員相続放棄をしたらそれで終わりということではありませんので、この点は特に注意してください。

この記事を書いた池邉からひとこと

本文のとおり遺言で指定された債務の負担者が債務を返済していけるのであれば問題ありませんが、場合によっては他の相続人に請求がなされる可能性もあります。遺言で債務の承継について記載する場合には、その効果について正しく知っておいてください。

また、例で挙げた事業の承継の場合には、事前に借入先である銀行に承継予定者を紹介し、生前から承継の準備を進めていくと良いでしょう。

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