遺言で内縁の妻に財産を渡す際の注意点|知多半島の遺言作成相談

内縁の妻は、残念ながら相続の権利はありません。つまり、なんら対策をしないことには、相続で財産を渡すことはできないということです。

しかし、遺言書があれば、内縁の妻に財産を残すことができます。

この記事では遺言書で内縁の妻に財産を渡す場合の注意点についてお伝えしますので、ぜひ参考としてください。

遺言で内縁の妻に財産を渡すことはできるのか

まず、遺言で内縁の妻に財産を渡すことは可能かどうかについて確認しておきましょう。

遺言があれば内縁の妻に財産を渡すことができる

結論からお伝えすれば、遺言があれば内縁の妻に財産を渡すことが可能です。

遺言で財産を渡す相手には特に制限はありません。そのため法定の相続人である子供などにはもちろんのこと、法律上は他人となってしまう相手に対してであっても、財産を渡すことができるのです。

遺言がなければ内縁の妻はいっさい相続権がない

遺言があれば、内縁の妻に財産を渡すことができます。しかし、遺言書を作っておかなければ、内縁の妻は相続でいっさい財産を受け取ることができません

これは、たとえ何十年と連れ添っており籍の入った夫婦となんら変わりない生活をしていた場合でも同様です。また、市町村によってはパートナー証明などを発行している場合がありますが、残念ながら相続についていえば、パートナー証明があっても相続権は認められません。

そのため、内縁の妻に財産を残したいのであれば、遺言書の作成は必須だと考えてください。

なお、「特別縁故者」の制度もありますが、これは被相続人に相続人が誰もいない場合にはじめて登場する話です。被相続人にたとえ長年会っていなくとも子や籍の入った配偶者がいたり、兄弟姉妹や甥姪がいたりする場合には、特別縁故者という話はそもそも出てきません。

また、「寄与分」などの制度もありますが、これも対象となるのは親族のみです。遺言書がなければ、内縁の妻は寄与分さえもらえません。

こう言った点も、誤解のないようにしておきましょう。

遺言で内縁の妻に財産を渡す場合の注意5つ

では、内縁の妻に財産を渡す遺言書を作る場合、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。ここでは、5つの注意点についてご紹介します。

相手をきちんと特定しておく

遺言書で内縁の妻に財産を渡したい場合には、遺言書で相手をしっかりと特定するように注意しましょう。

なぜなら、「下記の財産を花子に遺贈する」とだけ書いた場合には、どこの「花子」さんなのか特定が難しいためです。これは、同姓同名が少ないお名前だから良いということではないので、お気を付けください。

例えば、私の名前(池邉和美)は、同姓同名が少ないと思っていますが、それでも本当に同姓同名の人が世の中に1人も存在しないかと言われれば、断言できません。ましてや、それを手続きに際して法務局や銀行に証明できるかと言われれば、現実的に不可能でしょう。

そのため、遺言書で内縁の妻に財産を渡す場合には、次の3つの情報を正しく記載して、きちんと相手が特定できるようにする必要があります。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 住所

これらは、住民票などの公的書類で確認し、正しく記載してください。

「相続」ではなく「遺贈」になる

内縁の妻に財産を渡す場合には、「相続させる」ではなく「遺贈する」という言葉を使うことも知っておきましょう。

「相続人に対してであれば相続、相続人以外に対してであれば遺贈」と整理されることも多いのですが、実は法律上、「相続」と「遺贈」とはその性質が少し異なり、相続人に対してであれば「相続させる」ことも「遺贈する」ことも可能です。とは言え、通常は相続人に対してであれば、「相続させる」という言葉を使うことが一般的です。

その一方で、相続人ではない方に対して「相続させる」ことはできません。内縁の妻は相続人ではありませんので、内縁の妻に遺言書で財産を渡すのであれば、「遺贈する」の一択になります。

遺言書は遺言書をつくった方の意思をできるだけ推測して解釈することとされていますので、内縁の妻へ「相続させる」と書いてあったからと言ってただちにその遺言書が無効になるわけではありませんが、無用な問題を生じさせないためには、やはり正しい用語を使っておいた方が安心です。

遺留分に注意

遺言書で内縁の妻に財産を渡したい場合には、遺留分にも注意しておいてください。遺留分とは、子や配偶者など一部の相続人が持っている、最低限保証された相続での取り分を言います。

例えば、お子様がいるにもかかわらず「内縁の妻に全財産を遺贈する」という内容の遺言書を作った場合で考えてみましょう。

まず、遺留分を侵害したこのような遺言書をつくること自体は可能です。

しかし、その後亡くなった際、お子様から内縁の奥様に対し、「自分の遺留分を侵害しているので、侵害した遺留分相当額をお金で返してください」と請求がなされる可能性があるのです。この請求を、「遺留分侵害額請求」を言います。

この請求をされると、内縁の奥様は遺留分請求をしたお子様に対し、実際に遺留分相当の金銭を支払わなければなりません。もらった財産が金融資産ばかりであれば良いのですが、仮に簡単には換価できない自宅などが主要な財産であった場合には、遺留分の支払いに困ってしまう可能性があります。

そのため、遺留分を侵害した遺言書が必ずしもダメということではありませんが、遺留分を侵害した遺言書をつくる場合には、この点をよく理解したうえで作成するようにしましょう。

なお、遺留分は、2019年7月1日から施行されている改正民法で、原則として金銭での請求となっています。

遺言執行者を選任しておく

遺言書で内縁の妻に財産を渡す場合には、その遺言書で遺言執行者を選任しておきましょう。

遺言執行者とは、遺言書を遺言書どおりに実現する責任者のことだと考えてください。内縁の妻など相続人ではない人へ財産を遺贈する場合には、その実現に際して、「遺言執行者」か「相続人全員」の協力が必要です。

相続人の中に遺贈に反対をしている人がいれば厄介ですし、仮に相続人が全員遺贈に協力的であったとしても、いちいち複数の相続人のハンコをもらうとなれば、非常に煩雑でしょう。

そのため、遺言書のなかであらかじめ遺言執行者を定めておくと安心です。遺言執行者は専門家へ依頼することもできますし、財産を受け取る内縁の妻自身であっても構いません。

なお、仮に遺言書で遺言執行者の指定が無かった場合には、相続が起きてから家庭裁判所で遺言執行者を選任してもらうこともできます。

相続税が高くなる可能性がある

内縁の妻へ財産を遺贈した場合には、相続税が高くなります

その相続に相続税がかかる場合、相続人ではない人などが受け取った財産に相応する相続税は2割増しとなるとされているためです。相続税がかかる場合には、この点も知っておいてください。

登録免許税が高くなる

また、不動産の名義変更をする際に法務局に支払う登録免許税も高くなります

この登録免許税は、相続であればその不動産の固定資産税評価額の「1,000分の4」に軽減されている一方、相続人ではない人に財産を渡す遺贈の場合には、特に軽減がされず「1,000分の20」のままであるからです。この点は、内縁の妻に不動産を遺贈する場合には知っておくと良いでしょう。

とは言え、「相続税や登録免許税が高くなるなら財産をあげるのはやめよう」ということではないかと思いますので、こちらはあくまでも参考としてとらえていただくと良いと思います。

内縁の妻に財産を渡す遺言書はどの種類でつくるべき?

では、内縁の妻に財産を渡す遺言書を作りたい場合、どの遺言書を選択すれば良いのでしょうか。自筆証書遺言と公正証書遺言の比較から、考えてみましょう。

自筆証書遺言の問題点

まず、自筆証書遺言の場合には、費用が少なく、手軽な感じがする点がメリットです。また、2020年からは法務局での保管制度もはじまっていますので、保管制度を使うことで、従来の問題点はかなり解消されました。

とは言え、法務局での保管制度を使ったとしても、内縁の妻へ遺贈する場合には、やはり自筆証書遺言はあまりおすすめしていません。その理由は、次のとおりです。

全文自筆のハードルが高い

まずは、全文自筆のハードルが高い点が挙げられます。

民法改正により、財産目録の部分のみは自筆を擁しないこととされました。しかし、本文については引き続き自筆が必須とされています。遺贈をしたい相手の氏名や住所を間違えずに記載したり、その全文を正しく記載することは、考えているよりも大変なことなのです。

また、書き損じた場合にも、単に二重線を引いて押印をするだけではなく、より厳密な方法での訂正をしなければなりません。

内縁の妻は遺言書がなければ財産を一切渡すことはできませんから、万が一にも書き損じて無効となるリスクのある自筆証書遺言は避けた方が良いでしょう。

保管の申請には本人が出向かなければならない

また、法務局の保管申請をする際には、必ず本人が出向かなければならない点も知っておいてください。いくら弁護士や司法書士であっても、代行はで認められていないのです。

そのため、法務局へ出向くことが難しい場合には、保管制度の利用は困難でしょう。

内容はチェックされない

法務局での保管申請時には、方式違背はないかチェックをしてもらえます。しかし、原則として、内容についてアドバイスをくれるわけではありませんので、この点も知っておいてください。

自筆証書遺言である以上、作成の責任はあくまでも本人にあり、法務局は保管をしてくれるだけなのです。保管が認められたからといって、その遺言で問題がなく手続きできるとは限りません。

遺言能力の証明が難しい

また、遺言者がその遺言書を作る能力があったのかという証明が難しい点も、自筆証書遺言の問題点です。

遺言能力とは、「その遺言書の内容を本人がきちんと理解をしたうえで遺言書をつくる能力」のことだと考えてください。自筆証書遺言では、自分1人で作成することが通常ですから、この証明が難しくなります。

例えば、相続が起きてから、「父ちゃんはあのときもうボケていたのに、内縁の奥さんに無理やり手を持って遺言書を書かされたんだ」などと言われたときに、反証が困難なのです。

個人的には、この点がもっとも大きな自筆証書遺言の弱点だと考えています。

内縁の妻への遺贈は公正証書遺言がおすすめ

自筆証書遺言には、たとえ法務局での保管制度をつかってもこのような問題点が残ります。そのため、内縁の妻に財産を遺贈する場合には、やはり公正証書遺言で作成しておくべきでしょう。

公正証書遺言であれば、公証人や証人の面前で作成するため、本人が本人の意思でつくったという記録が残りやすいのです。

また、自筆をする必要もありませんし、外出が難しければ公証人に出張をしてもらい作成することもできます。書き方を誤って無効となる心配もほとんどありません。

たしかに公正証書遺言は自筆証書遺言とくらべて費用は掛かってしまいますが、ご自身が築き守ってきた大切な財産を大切な相手に渡すための大事な書類です。そこは保険と考え、確実な公正証書遺言で作成しておいていただきたいと思います。

この記事を書いた池邉からひとこと

内縁の奥様に財産を渡したい場合には、遺言書の作成は必須だと考えてください。内縁の奥様は相続人ではない以上、遺言書がなければ原則としていっさい財産を渡すことがができないためです。

ある日突然パートナーが亡くなってしまったとしても、遺言書がなければどうすることもできないのです。

内縁のパートナーがいらっしゃる方はこの点をよくご理解いただき、かなりお若いうちからでもぜひ遺言書を作っておいて頂きたいと思います。合わせて、ある程度ご年齢を重ねた際には、どちらかが入院をしたり認知症になってしまった場合に備え、任意後見契約や死後事務委任契約も結んでおくと良いでしょう。

残念ながら、相続の法律は内縁関係の方にはかなりシビアであるというのが現実です。そのため、ご自身亡き後のパートナーの生活を守るには、ご自身できちんと対策をしておく必要があることを知っておいてください。

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