遺言で相続放棄をするよう書いたら有効か|知多半島の遺言相談

遺言書の基本

相続人の中にあまり財産を渡したくない相手がいる場合もあるでしょう。そのような際、遺言書の中で「相続を放棄すること」などと書いたら、その記載は有効なのでしょうか。

この記事では、「相続を放棄すること」という遺言の有効性や財産を渡したくない相手がいる場合の対処法などのついて解説します。

遺言で相続放棄させることはできるのか

まずは、「相続を放棄すること」との遺言が有効かどうかについて考えてみましょう。

相続放棄とは

相続放棄とは、家庭裁判所に申述をすることにより、はじめから相続人ではなかったことにする非常に強い効果を持つ手続きです。

はじめから相続人ではなかったことになるということは、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続できなくなることを意味します。相続放棄をした人には、当然、最低限の取り分である遺留分の権利もありません。

遺言で相続放棄をさせることはできない

では、この相続放棄を放棄を遺言で強制することはできるのでしょうか。

結論を言えば、遺言で相続放棄を強制することはできません。いくら遺言の中に「長女の花子は相続を放棄すること」などと書いたとしても、花子さんに相続放棄をする義務が生じるわけではないということです。

たとえこのような遺言があったとしても、相続放棄をするかどうかは花子さん自身が自由に決めることができます。

相続人に財産を渡したくない場合はどうする?

遺言で相続放棄を強制できないとすれば、仮に相続人の中に財産を渡したくない相手がいる場合にはどうすれば良いのでしょうか。

その対応は、渡したくない相手が誰なのかによって異なります。ケースごとに見ていきましょう。

渡したくない相続人が兄弟姉妹や甥姪の場合

まずは、渡したくない相続人が兄弟姉妹やおいめいである場合について解説します。

なお、子供や孫といった第一順位の相続人がいる場合や、両親など第二順位の相続人が存命である場合には、兄弟姉妹やおいめいはそもそも相続人ではありません。これらの人がいない場合に、第三順位である兄弟姉妹やおいめいが相続人となるのです。

財産を渡さない内容で遺言書をつくる

財産を渡したくない相続人が兄弟姉妹やおいめいなのであれば、その対応は簡単です。なぜなら、兄弟姉妹やおいめいには、遺留分がないためです。

遺留分がありませんので、自分の取り分が一切ない遺言書があったとしても、法的に文句を言うことはできません。つまり、「私の妻である 常滑美智子 に全財産を相続させる」とか「私の甥である 半田太郎 に全財産を相続させる」などご本人の望む内容の遺言書さえきちんと作っておけば、結果的に財産を渡したくない兄弟姉妹やおいめいには財産を渡さずに済むわけです。

この場合には、後からトラブルとなってしまわないよう、公正証書で作成するようにしましょう。 

渡したくない相手が子や配偶者である場合

一方で、財産を渡したくない相手が子や配偶者である場合には、そう単純にはいきません。なぜなら、これらの相続人には遺留分があるためです。

そのため、正当な理由なく絶対に財産を渡さずに済む方法はないと考えてください。その上で、考えられる方法をまとめましたので、状況に応じて検討されると良いでしょう。仮に、「長女に全財産を相続させたい。一方で、長男には一切財産を相続させたくない」という前提で解説します。

財産を渡さない内容で遺言書をつくる

下記いずれの方法を活用するとしても、「長女に全財産を相続させたい。一方で、長男には一切財産を相続させたくない」と考えているのであれば、長女に全財産を相続させる旨の遺言書の作成はまず必須だと考えてください。

この場合には、遺言は必ず公正証書で作成しておくようにしましょう。自筆証書で作成した場合には、長男に廃棄されてしまったり、長男から「長女が無理やり書かせたのだから無効だ」「ボケていたお袋の手を持ってお前が勝手に書いたのだろう」などと主張されてしまうと、非常に面倒であるためです。

しかし、遺言書を作っただけでは万全とは言えません。なぜなら、長男には遺留分があるためです。そのため、実際に相続がおき、長女が全財産を相続した後で、長男から長女に対して「自分の遺留分を侵害しているので、侵害額相当分をお金で払ってくれ」といいう請求がなされる可能性があるのです。

ですから、遺言書の作成と合わせて、遺留分の請求をされないための対策も検討しなければなりません。

相続人からの廃除を検討する

長男に財産を渡したくない理由が、「被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったとき」に該当するのであれば、家庭裁判所に相続人からの廃除を請求することが可能です。相続人からの廃除が認められると、長男は相続人から除外されますので、長男は遺留分の権利もなくなります。

ただし、相続人からの廃除はとても重大な効果をもたらすため、そう簡単に認められるものではありません。例えば、単に反りが合わないだけであったり、双方に非がある親子ゲンカであったりするのみでは認められる可能性は低いでしょう。

遺留分の放棄をしてもらう

長男に財産を渡したくない理由が、すでに長男には多額の援助をしてきたとか長男のみが海外留学へ行き多額のお金をかけたなどという場合で、かつ長男自身も協力的であるのであれば、生前に遺留分を放棄してもらうことも考えられます。

ただし、生前に遺留分を放棄してもらうには、単なる個人間の書面のみでは意味がありません。生前の遺留分放棄には、家庭裁判所の許可が必要です。また、家庭裁判所は過去の贈与などの事情を加味して放棄の可否を検討しますので、いくら長男が良いと言っていても、申し立てれば必ず許可される性質のものではないことも知っておいてください。

また、長男が協力的ない場合にまで、無理に遺留分放棄をさせることはできません。

過去の贈与につき記録を残しておく

長男に過去に多額の援助をしたり多額のお金をかけたという事情があるものの、長男が遺留分放棄の手続きに協力的ではない場合や、そこまでしなくとも大丈夫だろうと判断した場合には、せめて過去の贈与やかけたお金について記録を残しておくと良いでしょう。

記録を残しておくことで遺留分請求をする抑止力になる可能性があるほか、仮に残っていた財産よりも多額の援助をしていたなどの状況によっては、裁判をした結果として遺留分請求が認められなくなる可能性もあるためです。

付言を活用する

また、法的効果はないものの、付言を活用することも1つです。付言とは、遺言書に書き添えることができるメッセージのことだと考えてください。

付言には、特に法的な制限はなく、遺言者の想いを記すことができます。例えば、次のようなものです。

長女の美智子は私たち夫婦と同居をしてくれ、安心して暮らすことができました。本当にありがとう。感謝の思いを込めて、このような遺言を作ります。美智子は3年前に亡くなった夫の介護のために仕事を制限し、私たちを助けてくれました。長男の太郎に残すものがなくて申し訳ないけど、どうか私の想いを汲んで、けんかすることなく、きょうだい仲良く暮らしていってください。

太郎は事業を興したもののうまくいかず、その間私が無償で手伝ったり、お金を援助したりしてきました。太郎にはもう十分支援してきましたので、残った財産は全て長女の美智子にあげようと思い、この遺言を作った次第です。

このような記載に、法的な拘束力などはありません。しかし、偏った内容の遺言を作った理由や想いを記載しておくことにより、遺言で取り分を減らされた相続人も納得しやすくなるのではないでしょうか。遺留分請求の抑止力としての効果が期待できますので、ぜひ遺言書には付言も書き添えていただきたいと思います。

この記事を書いた池邉からひとこと

遺言書で相続放棄をさせることはできません。しかし、誰に財産を渡したいというご希望や誰にはあまり財産を渡したくないというご希望があるのであれば、必ず遺言書を残しておいていただきたいと思います。

なぜなら、遺留分があるとはいえ、遺言書があればまずは遺言書どおりに手続きをすることができるためです。遺留分の請求がされるとしても、その後の問題となります。一方で、遺言書がなければ、まず相続人全員での遺産分割協議を経ないことには、何もできません。

また、遺留分は法定相続分よりは少ない(原則として、遺留分は法定相続分の2分の1)です。この点から見てもやはり遺言書は作っておくべきでしょう。

財産を渡したい相手や渡したくない相手が決まっているのであれば、ぜひ早いうちから遺言書を作っておくようにしてください。

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