終活において、実は生命保険はかなり万能です。この記事では、終活における生命保険の活用法について解説します。
なお、弊所では生命保険の代理店などにはなっておらず、保険商品の販売はしておりません。お客様よりご希望があった際には保険代理店の方をご紹介することはできますが、とくに保険の販売や紹介で収益を上げているわけではありませんので、第三者的な視点で記載しています。
終活における生命保険の活用法
終活において、実は生命保険はとても使い勝手の良いものです。その代表的なものとしては相続税の節税がありますが、そのほかにも資金繰り対策や遺留分対策、分割対策への活用もできます。
それぞれ、詳しく見てきましょう。
相続税の節税のために活用する
生命保険は、相続税の節税に活用できます。例えば長男に対して銀行預金のままお金を相続させるのと、生命保険でお金を相続させるのでは、渡すお金は同じであるにもかかわらず、相続税の計算上は大きな違いが生じるのです。
相続税の仕組みとは
相続税を計算するには、まず、亡くなった人(被相続人と言います。)が亡くなったときに持っていた財産に過去3年以内の一定の贈与などを足し戻した総額を計算します。これを、「課税価格の合計額」といいます。
誤解している方も少なくありませんが、この「課税価格の合計額」には、原則として生命保険金も含まれます。
そうして計算をした課税価格の合計額から、相続税の基礎控除額を控除します。相続税の基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算をされ、例えば法定相続人が2人であれば4,200万円、3人でれば4,800万円です。
基礎控除額を控除して残った金額がなければ、その相続については相続税はかかりません。一方で、残った金額があれば、それを更に計算していき、相続税を算定していくわけです。
ここでお伝えしたいことは、この「課税価格の合計額」が相続税の計算をするモトとなる金額であり、これが小さければ小さいほど相続税は安くなるということです。
生命保険の非課税枠とは
生命保険金も原則として課税価格の合計額に含まれると前述しましたが、ここで「あれ?」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。「生命保険って、相続税は非課税なんじゃないの?」と。
これは、ある意味では正解ですが、厳密にいえば次のとおりです。
生命保険金は、原則としては課税価格の合計額に含まれ、相続税の対象です。ただし、一定の要件を満たした生命保険金だけは、一定額まで特別に非課税とされています。
その要件とは、「相続人が受け取った生命保険金」です。
そのため、例えば相続人である配偶者や長男、長女が受け取った生命保険金は、次で説明をする一定額までは非課税となります。一方で、受取人が相続人ではない人(内縁の配偶者や、養子に入れていない配偶者の連れ子、子が存命である場合の孫、相続放棄をした人など)であった場合には、この非課税枠は使えません。
そして、非課税となる金額は、「500万円×法定相続人の数」です。例えば、法定相続人が2名であれば1,000万円、3名であれば1,500万円となります。
これは、その相続全体で認められた「枠」なので、配偶者と長男が各500万円の生命保険金を受け取った場合にももちろんどちらも非課税となりますし、法定相続人2名のうち配偶者だけが1,000万円の生命保険金を受け取っていたような場合であっても、これはまるまる非課税になります。
この非課税制度をつかうことにより、預金のままお金を相続させる場合と比べ、相続税の節税ができるわけです。
相続税の節税に使える生命保険の形態は?
生命保険の契約にはいくつかの形がありますが、相続税の非課税枠を活用できるのは、「保険料を被相続人が支払い、被相続人が亡くなったことで保険金が支払われる形態の生命保険」です。例えば、お父様が亡くなったことで長男に保険金が支払われる保険契約の保険料を、お父様ご自身が支払っていた場合などをイメージされると良いでしょう。
一方で、例えば被相続人であるお父様が亡くなったことで長男に保険金が支払われる保険契約の保険料を、長男が支払っていたような場合には、この非課税枠は使えません。
資金繰り対策として活用する
生命保険は相続が起きた後の資金繰り対策としても活用できます。具体的に見ていきましょう。
なぜ、生命保険が資金繰り対策に使えるのか
生命保険が相続発生後の資金繰り対策に使える理由は、相続が起きた後、相続人が実際にお金を手にできるまでのスピードは、預貯金よりも生命保険の方が圧倒的に早いケースが多いためです。
被相続人の預貯金は、その方が亡くなったことを金融機関が知った時点でいったん凍結されます。その後は、遺産分割協議がまとまらなければ引き出すことはできません。また、被相続人の出生までさかのぼる戸籍や除籍などの書類も必要となるため、仮に話し合いがスムーズにいったとしても、相続人がお金を手にするまでに、亡くなってから最低でも2か月程度はかかるでしょう。
もし話し合いがまとまらなければ、数年単位で預金が下ろせないことにもなりかねません。
一方で、生命保険は受取人が単独で受け取り手続きをすることが可能です。そのため、たとえ他の相続人との話し合いがまとまらなかったとしても、生命保険は速やかに受け取ることができます。
相続が起きた後は、葬儀費用など何かとお金がかかります。また、相続税がかかる方の場合には、相続税の納税資金も確保しなければなりません。こうした、相続発生後の資金需要にも、生命保険は活用できるのです。
資金繰り対策に使える生命保険の形態は?
では、資金繰り対策として使う場合の生命保険契約は、どのような形態にすれば良いのでしょうか。
まず、被保険者(その人が亡くなったら生命保険金が支払われるという対象者)は、被相続人である必要があります。そして、その保険金を支払う人は、被相続人本人でも構いませんし、受取人となる相続人が保険料を支払っても構いません。
ただし、保険料を誰が支払っていたのかにより、受け取った保険金がどの税金の対象となるのかが異なります。かかる税金の種類は、下記のとおりです。
- 被相続人本人が支払った場合・・相続税(ただし、受取人が相続人であれば非課税の適用あり)
- 受取人が支払った場合・・所得税(一時所得)
- 被相続人でも受取人でもない人が支払った場合・・贈与税
遺留分対策のために活用する
生命保険は、遺留分対策としても活用できます。では、具体的に見ていきましょう。
遺留分とは
遺留分とは、子や配偶者など一定の相続人に保証された相続での取り分を指します。遺留分を侵害した遺言書も有効ですが、侵害した分を返してくれと請求なされるかもしれません。
例えば、相続人が長男と二男であるにも関わらず、「長男に全財産を相続させる」という遺言書を残したと仮定します。この場合、二男から長男に対して「自分の遺留分を侵害しているので、お金で返してください」と請求がなされる可能性があるわけです。この請求がされると、長男は実際に二男に対し、遺留分相当のお金を支払わなければなりません。
しかし、長男がもらった相続財産が金融資産ばかりであるケースは稀でしょう。むしろ、自宅の不動産や自社株など、簡単に換金できないものが大半を占めるケースは少なくありません。そうした際に遺留分を支払ってくれと言われても、困ってしまいます。長男が自分で遺留分を払えるくらいのお金を持っていれば良いのですが、そうしたケースも多くはないでしょう。
こうした際に役立つのが、生命保険です。なぜなら、被相続人の死亡により長男が生命保険を手にできれば、仮に二男から遺留分の請求をされたところで、その生命保険金を原資として遺留分を支払えば良いためです。
また、生命保険は原則として、遺留分を算定する基礎となる財産としてカウントされません。この点も、生命保険が遺留分対策に使いやすい理由の1つです。
遺留分対策に使える生命保険の形態は?
では、遺留分対策で使うための生命保険は、どのような契約形態とすれば良いのでしょうか。
この場合、被保険者は被相続人となります。そして、保険料は、被相続人が支払っても構いませんし、受取人が支払っても構いません。
分割対策として活用する
生命保険金は、分割対策としても活用できます。これは、どういうことなのでしょうか。
分割対策として生命保険が使える理由
分割対策として生命保険が使える理由は、生命保険を受け取る際には他の相続人の同意がいらないためです。たとえば長男を受取人に指定した保険金を長男が受け取るのに際して、二男の同意は必要ありません。
こうした理由から、例えば長男にはまとまったお金を確実に渡してあげたいという際などに、生命保険を活用することができるのです。
また、例えば養子縁組をしていない配偶者の連れ子は相続人ではありませんので相続で財産を渡すことはできませんが、生命保険の受取人としておくことで、財産を渡すことが可能です。とは言え、生命保険の受取人に指定できる相手には保険会社により制限があることもありますので、相続人ではない人を受取人とする際には、保険会社に個別で確認してください。
分割対策に使える生命保険の形態は?
では、分割対策に使いたい目的での生命保険の契約形態はどのようにすれば良いのでしょうか。
まず、被保険者は被相続人です。そして、保険料の支払いは、被相続人本人とすると良いでしょう。また、生前贈与で保険料相当分を受取人に贈与し、受取人が自分で保険料を支払う形態も考えられます。
この記事を書いた池邉からひとこと
生命保険は、終活にあたって非常に使い勝手の良いものです。相続税の非課税枠以外にもさまざまな活用が考えられますので、「何のために使うのか」という点を意識して、対策を練っておくと良いでしょう。
そして、生命保険をあわせて遺言書の作成もぜひご検討ください。個人的は、遺言書は生命保険に加入したり内容を見直したりするタイミングで作成しておいていただきたいと考えています。なぜなら、「いま自分に万が一のことがあったら、誰の生活を守りたいか」という想いを実現するためのツールという意味では、生命保険も遺言書も同じであるためです。
結婚したとき、家を建てたとき、子供が生まれたとき、子供が結婚をしたとき・・など、人生の転換期で、ぜひ遺言書についても考えてみてください。
こんな時は、無料相談をご利用ください
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- スムーズに手続きができる遺言書を作成したい
- 遺言書作成をサポートしてほしい
- 自分にも遺言書が必要か相談したい
- 遺言書を作りたいが、何から手を付けて良いかわからない
お身内のご相続が起きた場合
- お身内が亡くなったが、何から手を付けて良いかわからない
- 相続手続きの代行をしてほしい
- 相続人の中に、住所がわからない人がいて困っている
- 相続手続きで、ご自身が何をすべきか知りたい
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