例えば生前に、「私の財産は、すべて長男のあなたがもらってくださいね」と伝えておいた場合、その口約束に法的な効果はあるのでしょうか。
この記事では、口約束の遺言の効果や、法的に効果のある遺言書の方式などについてお伝えします。
遺言書とは

遺言書とは、遺言者(遺言書をつくった人)の亡きあとの財産の行き先などを決めておく、法律上の文書です。単に「できればこうやって分けてね」という希望を書いたものではなく、原則として遺言書どおりに財産が分けられることになります。
遺言書は、このような強い効果をもたらすものであることを知っておきましょう。
遺言は口約束でも有効か

では、生前に「この財産はあなたがもらってね」や、「兄弟で半分ずつ分けてね」と伝えて相手方も了承すれば、その口約束でも有効なのでしょうか。
口約束の遺言には効果はない
結論をお伝えすれば、残念ながら、口頭での遺言には法的な効果はありません。これは、例えばそのやり取りの様子を撮影するなどして、口約束をしていた証拠が残っていたとしても同様です。
遺産分割の参考にすることはできる
とは言え、「私の亡きあとはこのように財産を分けてほしい」と生前に伝えておいた内容を、財産を分ける参考としてもらうことは可能です。
例えば、「私の亡きあとは、自宅の不動産は長男がもらってね」と口頭で伝えておいた場合、相続人の全員が納得するのであれば、実際に自宅不動産を長男が相続するように遺産分割協議を成立させることは可能です。
ただし、これには相続人全員の同意が必要であることは知っておいてください。例えば、二男が「自宅を長男がもらうのは納得ができない」と主張する場合、二男の同意なく(厳密にいえば、二男が遺産分割協議書に押印をしてくれないままで)、不動産を長男の名義に変えることはできないのです。
一方で、自宅不動産を長男に相続させる旨の有効な遺言書があれば、いくら二男が反対したところで、長男は自宅を自分の名義に変えることができます。
遺言書の3つの方式とおすすめの方法

口約束の遺言は、残念ながら法的な効果はありません。相続が起きた後できちんと想いを実現してほしいのであれば、やはりきちんと法律に則った形で遺言書を作成しておく必要があります。
口約束の遺言は、残念ながら法的な効果はありません。相続が起きた後できちんと想いを実現してほしいのであれば、やはりきちんと法律に則った形で遺言書を作成しておくことが必要です。
では、遺言書にはどのようなものがあるのでしょうか。平時に使う遺言書の種類としては、下記の3つがあります。
自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、自書することが要件となっている遺言書です。本文全文を自書する必要があるほか、署名や捺印、日付の記載などの要件があります。
手軽に書ける点や費用が掛からない点がメリットである一方で、遺言書を隠されたり捨てられたりしてしまうリスクや、書き方を間違えて無効になってしまうリスクなど、問題も少なくない手法です。
2018年に成立した改正民法により、財産目録の部分についてのみは自書を要しないこととされました。とは言え、自書しなかった財産目録にも署名や捺印をするなどの細かな要件はあるため、注意が必要です。
また、2020年7月より、自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる制度も始まっています。保管制度を使った場合には、偽造などのリスクを減らすことができるほか、要件を満たせず無効になるリスクは大幅に減らせることとなりました。
しかし、保管制度を利用したとしても、内容まで確認してもらえるわけではありません。また、本人に遺言の内容を理解して作成する遺言能力があったかどうかという点までは確認されないため、遺言書の内容を快く思わない人から、「そのときはもうボケていたので、無効だ」などと主張されるリスクは、比較的高いと言えます。
公正証書遺言
公正証書遺言は、公証人の面前で遺言の内容を口授して作成する遺言書です。実務上は、事前のやり取りで遺言書の文案を決め、当日は大まかな内容の確認とあらかじめ作成した文案の読み合わせをしたうえで、署名捺印をして作成が完了することが多いと言えます。
公証人のほか、証人2名の立ち会いが要件です。
公正証書遺言は、原本が公証役場で保管されるため紛失などの心配がありません。また、遺言書を自書する必要がありませんので長い文章を書くのが難しい方であっても作成できるうえ、要件を満たせず無効となってしまう心配も不要です。さらに、公証人と証人の面前で作成しますので、遺言能力がなかったとして無効になる可能性もほとんどないと考えて良いでしょう。
作成に費用がかかるものの、最も安心で確実な方法であるがゆえに、最も多く使われている作成方法です。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は、あらかじめ自分で作成をした遺言書を封に入れ、その封ごと公証役場へ提出することで作成をする遺言書です。
遺言書の内容が公証人にさえ知られないという点がメリットと言われていますが、もともと公証人には守秘義務がありますし、証人も守秘義務のある行政書士などの専門家を活用すれば外部に情報が漏れることはありませんので、そこまで大きなメリットかと言えば疑問が残るところです。
むしろ、遺言書の内容は誰の確認も入りませんので、自筆証書遺言と同様に無効となるリスクが高く、あえてこの方法で作成をする理由がないことが多いと言えます。
実際に、秘密証書遺言はほとんど活用されておらず、弊所でも一度もお手伝いしたことがないほどです。
口約束のほかにも法的効果のない遺言とは

遺言書は、上記のような要件を満たす形で作成しなければ、無効となってしまいます。
では、口約束のほかに、どのような遺言書が無効なのでしょうか。無効な遺言書をご紹介しますので、このような遺言書をつくってしまわないよう、ご注意ください。
映像でのこした遺言
最近ではスマートフォンを持っている方も多く、家庭でも簡単に動画を撮ることができます。また、映像で残っていれば「きちんと証拠が残っているのだから有効だろう!」と感じるかもしれません。
しかし、残念ながら、映像でのこした遺言書に法的な効果はありません。想いをのこすビデオメッセージとしての活用であれば良いかと思いますが、その映像を使って名義変更をしたりすることはできないのです。
録音でのこした遺言
また、録音でのこした遺言書にも法的な効果はありません。こちらも、あくまでも想いを伝える手段だと考えておくと良いでしょう。
紙に書いたものの要件を満たしていない遺言
また、紙に書いたとしても、例えば押印や日付がなかったり、自書ではなかったりと要件を満たしていない場合には、それは遺言書としての効果はありません。
専門家へ依頼せず、自分ひとりで遺言書を作成しようとする際には、要件を外してしまうことのないよう、十分に注意しましょう。
この記事を書いた池邉からひとこと

口頭の方が想いが伝わりやすいという側面はあるものの、残念ながら口頭で伝えた遺言に法的な効果はありません。法的な効果を得たい場合には、必ず法的な要件を満たした遺言書を作成するようにしてください。
ただし、書面での遺言書とあわせてビデオメッセージや録音メッセージを残しておくことは、とても良いと思います。遺言書のみではどうしても事務的な印象になってしまいますが、遺言者さまが直接話されている映像などがのこっていると遺言者さまの想いが伝わり、やはりご家族としては嬉しいはずだからです。
法的要件を満たした書面での遺言書と、想いを伝えるためのビデオメッセージの併用も、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
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