民法相続法改正と配偶者。~配偶者居住権の創設

相続法改正

2018年相続法改正

配偶者居住権というのが新しくできたと聞いたの。どんな制度なのかしら?

例を挙げて、解説していきますね。

2018年に、民法相続編が大改正され、相続のルールに、いくつかの大きな変更が生じました。ここでは、この改正が配偶者に与える影響のうち、配偶者居住権の創設に焦点を当てて、解説していきます。

配偶者居住権とは

配偶者居住権とは、「自宅の土地建物」という1つの財産を、「配偶者が亡くなるまで、自宅に無償で住み続けられる権利(=「配偶者居住権」)」と、その自宅土地建物の所有権とに分けて相続することができる制度です。

配偶者居住権は、何のためにあるのか

配偶者居住権の効果としては、主に次の2つが考えられます。

1、跡継ぎ遺贈的な効果の実現

例えば、財産を残す側の方が、このように考えていたとします。

  1. ケース1 自宅の不動産。自分の亡きあとも後妻である妻には安心して亡くなるまで暮らしてほしい。でもそのあとは、後妻の連れ子ではなく、前妻との子である自分の実子に自宅の所有権を戻してあげたい
  2. ケース2 推定相続人は、妻と、長男と二男。自分の亡きあとも、妻には自宅の不動産で安心して亡くなるまで暮らしてほしく、その後は二男に不動産を渡してあげたい。ただ、先に二男に渡してしまうと、二男の嫁と妻は折り合いが悪いので、妻が追い出されてしまうかもしれない

この想いは、実現できるか

このようなケースでは、例えば「自宅を妻に相続させる。その後、妻も死亡したら、その自宅は〇〇に相続させる」といった遺言が作成できれば解決です。しかし、このようないわゆる「後継ぎ遺贈」は、無効とされています。

信託を使うという方法もありますが、そのためには原則として、信頼できる受託者となってくれる方(ご家族など)が必要なほか、費用も比較的高額になります。

そのため、上記のようなケースでは、苦肉の策として、遺言書ではとりあえず「自宅不動産は妻に相続させる」こととして、そのうえで妻にも遺言を書いてもらう、といったようなことが、妥協策としては多かったように思います。

しかし、その場合のリスクとして、妻が遺言書を書き換えないことまでは当然縛ることはできない点があります。例えばケース「ⅰ」では、後妻としてはほとんど面識のない夫の前妻との子よりも自分の実子の方が可愛いでしょうから、やはり不動産は実子に渡すと、遺言書を書き換えてしまうリスクはあったわけです。

配偶者居住権の創設によってどうなったか

このような問題は、改正により創設された配偶者居住権を利用することで、解決できることとなりました。

この制度により、自宅不動産という1つの財産を、「配偶者が死亡するまで無償で自宅に住む権利」と、「自宅不動産の所有権」とを分けて遺贈することができるようになったのです。

つまり、上記ⅰの例では、配偶者居住権を後妻に遺贈する一方、自宅不動産自体は実子に相続させる、という遺言書を作成することが可能になったのです。ⅱの例でも同様です。

配偶者居住権は「後継ぎ遺贈」ではありませんが、実質的に後継ぎ遺贈「的な」ことを実現することができるようになりました。

2、柔軟な遺産分割の実現

まず、大前提として、相続人全員が合意するのであれば、遺産分割の内容は自由です。例えば、相続人が妻と長男、二男である場合、この3名が全員納得するのであれば、妻が全財産を相続しても良いですし、また、長男や二男がすべて相続したって良いわけです。

しかし、話し合いがまとまらない場合には、原則として、法定相続で決着をつけることとなります。妻が2分の1、残りの2分の1を子で等分、というアレですね。

このように、法定相続で分けることとなった場合には、分割方法に制限が出てきます。例えば、妻と長男、二男が相続人で、相続財産が次のようであった場合を想定してみましょう。

  • 被相続人と妻が2人で住んでいた自宅不動産(土地建物)3,000万円相当
  • 預貯金 3,000万円相当

この場合、全財産が6,000万円ですから、妻の法定相続分はその2分の1である3,000万円です。今後安心して自宅に住み続けるためには、妻としては自宅不動産を相続したいところですが、自宅不動産を相続してしまうと、預貯金は一切相続できません。そうなると、今後の生活に困窮してしまう可能性があります。

配偶者居住権の創設によってどうなったか

こういった問題も、配偶者居住権を利用することで、解決できることとなりました。

繰り返しますが、この制度により、自宅不動産という1つの財産を、「配偶者が死亡するまで無償で自宅に住む権利(=「配偶者居住権」)と、「自宅不動産の所有権」とに分けて相続することができるようになったのです。

「配偶者居住権」の評価は、配偶者の平均余命等から計算されるため、ケースによって異なりますが、当然、その不動産全体の評価よりは低くなります。

前述の例で、仮に、配偶者居住権が1,500万円と評価されたとしましょう。そうすると、妻は「亡くなるまでその自宅に住み続ける権利」を相続してもなお、残り1,500万円の枠がありますので、更に預貯金も相続することが可能となります。

このように、従来よりも柔軟な遺産分割協議ができる点も、配偶者居住権のメリットです。

配偶者居住権の注意点

1、売却する権利はない

ただし、配偶者居住権は良いことばかりではありません。配偶者居住権は、あくまでも「亡くなるまで住む権利」ですので、その自宅を売却する権利まではないのです。

例えば、一人暮らしとなった妻が、その後自宅を売却して得た資金を元手に、老人ホームに入所する、といった方法はとることが難しくなります

2、所有者とのトラブル

そもそも、配偶者と自宅の所有権を相続した人との折り合いが良くない場合には、住んでいく中での自宅の修繕などについて、配偶者と所有者との間でトラブルに発展する場合があります。法律上は解決策がある場合でも、精神的に消耗してしまう場合もあるでしょう。

このように、配偶者居住権は配偶者にとって良いことばかりということではありません。利用する際には今後起きうる様々な場面を想定し、慎重に検討されることをお勧めします。

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