民法相続法改正後の、公正証書遺言と自筆証書遺言の違い。

相続法改正

相続法の大改正

相続法の改正後、結局遺言書は、自筆証書と公正証書のどちらで作成すれば良いのかしら。

やはり、引き続き公正証書がオススメです。同じ点と異なる点を見ていきましょう。

2018年7月成立した改正民法により、に相続のルールが約40年ぶりに大改正されました。この中で、遺言書の形式に関するものに、次の二つがあります。

  1. 自筆証書遺言の方式緩和
  2. 自筆証書遺言の法務局での保管制度

遺言書をつくる際、自筆証書遺言にしようか、公正証書遺言にしようかと、迷われる人は少なくないでしょう。私自身もこれまで、著書やセミナーなどで、この二つの違いを繰り返しお伝えしてきました。

しかし、今回の改正により、二者の違いは、かなり小さくなります。

今回は改めて、法改正後における自筆証書遺言と公正証書遺言の違いをまとめてみました。なお、自筆証書遺言は、法務局での保管制度の施行後であっても、保管制度の利用は任意ですが、下記比較はすべて、法務局での保管制度を利用している前提である点にご留意ください。

自筆証書遺言と公正証書遺言の同じ点

1、相続が起きた後の検認が不要

従来、自筆証書遺言は、相続発生後、検認手続きが必須でした。これが改正後、法務局での保管制度を利用した場合には、自筆証書遺言であっても検認は不要となります。

検認は偽造変造を防ぐため、遺言書の現況を保存する意味合いであるところ、法務局での保管により偽造変造が行われにくくなることから、検認も不要となりました。

2、偽造変造されない

自筆証書遺言の最大のリスクとも言える、遺言書の偽造変造。

しかし、法務局の保管制度を利用することで、保管された時点以後の偽造変造は、実質的に不可能となりました。

3、相続開始後、検索ができる

公正証書遺言は従来より、相続開始後に、法定相続人など一定の利害関係者が、公証役場で遺言書の有無を調べることが可能でした。

一方、自筆証書遺言の場合には、その用紙自体が見つけられなければ手続きに使いようがなく、見つけてもらえないリスクがありました。

法施行後は、法務局での保管制度を利用することにより、自筆証書遺言であっても、一定の利害関係人が、遺言書の有無を調べられるようになります。

4、形式的に無効な遺言書は作れない

遺言書の保管制度を利用した場合、法務局にて形式面は確認してもらえることになっていますので、形式的にそもそも無効な遺言書は作成されないこととなります。

自筆証書遺言と公正証書遺言の異なる点

では、法改正後も自筆証書遺言と公正証書遺言の異なる点には、何があるのでしょうか。

1、自筆証書遺言は、自筆が必要

改正により、自筆証書遺言の財産目録のみは自筆でなくとも良いこととなりましたが、本文については自筆が求められる点は従来どおりです。そのため、文字が書けない人や、手に力があまり入らない人などは、自筆証書で遺言書を作ることは困難でしょう。

一方、公正証書遺言であれば、文字が書けなくても作成できます。

2、自筆証書遺言は、公証役場の手数料がかからない

公正証書で遺言書を作成するには、公証役場へ手数料が発生します。費用は、全国一律で決まっていますが、遺言書の内容により異なります。

一方、自筆証書遺言であれば、特段、費用は掛かりません。

なお、法務局での保管制度を利用する際には、3,900円の手数料が必要となりますが公正証書遺言の作成費用と比べると少額ですね。

3、遺言者の状態や意思の証明が困難

公正証書遺言を作成するには、公証人のほか、証人2名の立ち合いが必須である一方で、自筆証書遺言は、一人でも作成できます。

つまり、自筆証書遺言の場合には、「本当に本人が本人の意思で書いたのか」
「本人はそのとき認知症等ではなかったのか」という証明がきわめて困難、ということです。

そのため、高齢の方が遺言をする場合には、自筆証書である場合は特に、認知症でない旨の診断書をとったり、本人の意思である証拠をのこすなどの工夫が必要でしょう。

以上が、改正法施行後における公正証書と自筆証書の違いです。

両者の差は小さくなったとはいえ、揉め事の可能性がある場合や高齢の場合などには、やはり公正証書で作成された方が良いでしょう。

遺言書作成時の注意点

改正により、これまで遺言書は不要と考えていたような方も、自筆証書の有用性が高まったことにより、遺言書をのこすケースが増えていくでしょう。

いずれにしても、最も注意すべき点は、公正証書遺言であっても自筆証書遺言の法務局の保管であっても、基本的には形式面を整えてくれるに過ぎない、という点です。

法的に無効な公正証書遺言はさすがに見たことはありませんが、拙著、「残念な実例が教えてくれる、きちんとした、もめない遺言書の書き方、残し方」でも
いくつも紹介している通り、公正証書遺言であっても「残念な」遺言書は散見されます

問題のない遺言書をつくるためには、形式面の要件のみを満たせば良いというものではありません。遺言書作成後の状況の変化、のこされる人の心情、税金のこと、実際に相続が起きた後の手続き・・など、多岐にわたる検討が必要なのです。

これは、公正証書遺言であっても、自筆証書遺言であっても同じこと。

遺言書を作成する際は形式面や目先の費用ばかりにとらわれるのではなく、きちんと「中身」について検討することを忘れないようにしましょう。

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