改正により創設された、自筆証書遺言の保管制度とは?

相続法改正

改正で新設された、自筆証書遺言の保管制度

2018年に成立した改正相続法(民法 相続編の改正)の一環として、法務局での自筆証書遺言の保管制度が新設されました。

では、こちらは具体的にどのような制度なのでしょうか。解説していきます。

自筆証書遺言の保管制度

この制度の一番のポイントは、その名称通り、これまでは自分で保管するか、信頼できる任意の相手に預けるしかなかった自筆証書遺言につき、法務局が保管をしてくれるという点です。

また、この制度を利用した場合、保管時に要件の確認はしてもらえることとなっています。

更に、保管された遺言書はデータとして保管されますので、遺言者様本人が亡くなった際には、法定相続人や受遺者など一定の利害関係人が、法務局で「被相続人が遺言の保管をしてもらっていたかどうか」を調べてもらうことができ、更に保管がある場合には、その内容の情報の交付を受けることも可能です。

加えて、保管制度を利用した場合には、従来自筆証書遺言であれば必須であった検認も不要となります。もともと検認とは、発見時点の遺言書情報を保存することで、以後の偽造変造を防ぐことが大きな目的であるところ、保管制度を利用した場合には法務局にデータが保管されているので、偽造変造が困難であるためです。

遺言書保管制度を利用するメリット

上記から、保険制度を利用するメリットをまとめると、次の通りです。

  1. 遺言書が偽造・隠匿されたり、紛失したりするリスクが限りなく0になる。
  2. 相続発生後に、遺言書を見つけてもらえないリスクを防ぐことができる。
  3. 保管時に要件の確認をしてもらえるので、明らかに無効な遺言書を、作成してしまうリスクを減らすことができる。
  4. 検認が不要なので、相続開始後の手続きがスムーズ。
  5. 相続発生後、法定相続人など誰かが保管情報の交付や閲覧を請求した場合には、法定相続になど利害関係者全員に自動的に通知がなされるため、相続人全員への通知がスムーズ。

遺言書保管制度を利用するデメリット

一方で、考えられるデメリットは下記の通りです。

  1. 制度利用の費用がかかる。保管申請時の手数料は3,900円。
  2. 保管時の出頭は代理人は不可で、例外なく必ず本人が法務局に出向く必要があるので、法務局までの交通手段のない人や入院中の人などは利用が困難。ただしこれは、なりすましや無理やり遺言書を書かされ保管されるリスクを減らすためのものなので、一概にデメリットのみではないが・・。
  3. メリット「5」は、人によってはデメリットだと感じるかもしれない。ただし、保管制度利用なければ検認が必要で、検認の案内も法定相続人全員にされるため、保管制度利用独自のデメリットというわけでもないが。

遺言書保管制度を利用する際の注意点

じゃあこの制度を使えば、誰でも安く完璧な遺言書を作れるってわけだ!

実は、そうとも言えないんです。問題の無い遺言書をつくるには、形式面の要件を満たすだけでは不十分だからです。

最も懸念するのは、保管の際に形式的な確認がされることから、「問題ない遺言書が簡単に作成できる」という誤解が広まってしまう点です。

公正証書でも自筆証書でも同様ですが、形式的に無効でないということは、あくまでも、問題のない遺言書を作成するための、最低限の要件でしかないためです。

問題のない遺言書を作成するには、形式的に無効でない点はもちろん、それに加えて下記のような、多岐にわたる検討が不可欠です。

  • 遺留分のことは検討しているか。もし遺留分侵害額請求をされた場合、支払えるのか。
  • 相続税はそれぞれの相続人・受遺者が支払えるのか。せっかくの特例が使えない内容となっていないか。
  • 不要な譲渡所得がかかる内容となっていないか。
  • 手続きはスムーズにできるのか。
  • 今後の状況の変化に対応できる内容なのか。

上記は一例ですが、遺言者の状況により、様々な角度から検討し、リスクを減らしておかなければ、いくら形式上は有効であったとしても、残された家族を困らせる遺言書となってしまいかねません。

このような検討が漏れていても、例えば法務局に遺言書の保管を申し出た際に、

「この遺言書だと譲渡所得税が多額にかかりますが、大丈夫ですか。」とか、

「遺留分を侵害していますが、もし請求されたら〇円くらい支払えますか。」

とか、

「この内容だと相続税の特例が使えませんが、良いですか。」とか、

そんなことは原則として教えてはくれません。

見てくれるのはあくまでも、「きちんと署名押印があるか」「財産目録にも署名押印があるか」「日付は書いてあるか」といったような、形式面なのです。

拙著でも記載の通り、問題のない遺言書を作成することは、実はそれほど簡単なものではありません。専門家がかかわった遺言書でさえも、問題のあるものが散見されているほどです。

後世に問題を残してしまわないためにも、無理に一人で作成してしまうのではなく、専門家も活用しながら、後悔しない遺言書を作製して頂きたいと思います。

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