遺言における包括遺贈と特定遺贈の違いとは?

遺言書の基本

包括遺贈と特定遺贈

遺言書で財産の行先を指定する方法には、包括遺贈と特定遺贈の二種類が存在します。

ここでは、その違いと、メリットデメリットを解説します。

包括遺贈と特定遺贈の例

まず、それぞれどのような記載を指すのでしょうか。包括遺贈とは、「相続財産の3分の2を長男へ、3分の1を長女に相続させる。」というように、割合のみを指定する記載方法です。

一方、特定遺贈とは、「自宅の土地建物と、●×銀行普通預金は長男へ、××銀行定期預金と普通預金は長女へ相続させる」のように、個々の財産について具体的に渡す相手を指定する方法を言います。

包括遺贈のメリット・デメリット

まず、包括遺贈のメリットは、特定遺贈と比較して、記載が簡単なこと。それのみです。

一方で、包括遺贈のデメリットとして大きいものは、遺言書を書いたにも関わらず、遺産分割協議が必要であるという点です。

遺言書は相続争いや相続手続きの簡便化のために利用されることも多いのですが、結局話し合いが必要となる包括遺贈では、何ら解決になりません。話し合いがまとまらなければ、預金口座の解約などの手続きはできませんし、不動産の名義変更もできないのです。また、遺言書によって財産の取り分を減らされた相続人が、反発の想いから、話し合いに応じない可能性もあります。そうなれば、遺言書が無い方が良かった、などという事態にさえ、なりかねません。

特定遺贈のメリット・デメリット

これに対して、特定遺贈のデメリットは、個々の財産を記載する必要があるため、記載に多少手間がかかるというくらいです。

一方、メリットは、何と言っても、手続きの際に、相続人同士の話し合いや他の相続人の押印が原則として不要な点でしょう。公正証書遺言で作成するとか、遺言執行者を指定するなどの要件を満たせば、原則として他の相続人の協力を得ることなく、手続きを行う事が可能なのです。

こういった違いを理解し、遺言書を作成する際は、必ず特定遺贈で記載するようにしましょう。

包括遺贈でも問題のないケースもある

とは言え、包括遺贈がすべてダメなわけではありません。たとえば渡す相手が1名であれば包括遺贈で問題ありませんし、また遺言執行者が預金を解約換金して配分するようなケースでは、金融資産に限っては包括遺贈で問題ないでしょう。

少し複雑になりますので、この辺りは実際に作成される際、専門家に相談してみてください。

遺言書は、法的要件のみ満たせば良いわけではない

遺言書さえあれば、必ず相続争いを防げるというわけではありません。

問題の無い遺言書を作ることは、実は簡単ではなく、包括遺贈で作成した遺言のように中途半端な遺言書を残すことで、むしろ相続争いを悪化させたり、勃発させたりする危険性もあるのです。

取り返しのつかない後悔をしないために、遺言書作成の際は必ず、「相続が起きた後の現実に詳しい専門家」に相談してください。

また、法的に有効かどうかと、残された家族がスムーズに手続きできるかどうかは、まったく異なる視点です。かならずその両方の側面に注意し、作成するようにしましょう。

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