遺産分割協議書とは
相続が起き、遺言書がない場合に、故人名義の預金口座の解約や証券口座の名義変更、不動産の名義変更などさまざまな手続きをする際には、原則として遺産分割協議書が必要です。
遺産分割協議書とは、「誰がどの財産をもらうのか」を相続人全員で話し合い、その結果をまとめ、実印を押した書類です。
各金融機関の書類に署名捺印する形でも良いが・・
さて、金融機関には、その金融機関独自の書式があり、その書式に相続人全員が署名・捺印をすることにより、特に遺産分割協議書を提出せずとも、払い戻し自体は受けられるケースがほとんどです。
金融機関の独自書式により、預金の払い戻しについての相続人全員の意思の確認はできるためです。
では、相続財産が預貯金のみであった場合にも、遺産分割協議書の作成は必要なのでしょうか。手続き自体は協議書がなくてもできるのであれば、一見、遺産分割協議書をわざわざ作る必要はないように思えます。
しかし、結論としては、仮に預金の払い戻しを受けた後、他の相続人にもお金を分けたいと考えるのであれば、遺産分割協議書は必要です。
遺産分割協議書と、銀行の独自書類の役割の違い
銀行側としては、「故人のお金の誰あてに払い戻せば良いか。そして、その人に払い戻すことに対して、他の相続人は納得しているかどうか」が知りたいわけです。「故人のお金を最終的に誰がもらうか」は、銀行には関係ありません。
一方で、遺産分割協議書は、「そのお金を、最終的に誰がもらうか」という記録を残す役割をもちます。
事例
例を挙げてみていきましょう。仮に相続人が、AとBのふたりだったとします。
一旦Aが銀行口座のお金の払い戻しを受けたとしても、そのお金を最終的にAがもらうかどうかはわかりません。
Aが本当にすべて相続する、というケースもあるでしょうし、ただ単に平日の日中に動きやすいのがAだったため、Aが銀行手続きに出向きお金いったん預かっただけで、あとからその半額などをBに対して払う、というケースもあるでしょう。
この、「相続でもらった財産の最終的な帰属」を記すのが、遺産分割協議書なのです。
例えば、故人名義の預貯金が1,000万円で、他に相続財産がないのであれば、全財産が相続税の基礎控除以下なので、「相続において」誰がどうもらおうと、相続税はかかりません。
一方、Aが相続でもらった財産を、あとからBに渡すのであれば、これは「AからBの贈与」として、贈与税がかかる可能性があります。
そのため、無用な税金を生じさせないためにも、「これはAからBへの贈与ではなく、この相続の一環としての資金移動なのですよ。」ということのわかる遺産分割協議書を作成しておく必要があるのです。
単に口座が解約できれば良い、という視点ではなく、その後生じうるさまざまなリスクを回避するためにも、必ず遺産分割協議書は作成しておきましょう。
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