遺言書の種類とおすすめの方法
通常使われる遺言書には、大きく分けて二つの種類が存在します。紙とペンを用意して自分で書く「自筆証書遺言」と、公証役場へ出向いて作成をする「公正証書遺言」です。
この二つの種類の遺言書のうち、専門家としてオススメするのは、これは間違いなく、公正証書遺言です。
なぜ、公正証書遺言がお勧めなのか
これは、なぜでしょうか。自筆証書遺言は紙とペンさえあれば作成できて手軽、しかも費用もかかりません。
それでもなお、公正証書遺言をお勧めするのは、相続が実際に起きた後の現場を数多く見てきた結果なのです。
自筆証書遺言は、検認が必要
まず、自筆証書遺言は、相続が起きた後に「検認」という手続きが必要です。これは、公正証書遺言では必要ありません。
検認を終えるには相続発生後3カ月以上かかることも少なくなく、この間、故人の銀行口座からお金を引き出すことはできません。これは残された家族にとって、大きな不利益です。
(2020年11月追記:改正により、自筆証書遺言であっても法務局へ預け入れたものは、検認が不要となりました)
自筆証書遺言は、無効になる可能性が高い
また、自筆証書遺言は、やはり検討不足なものが多いのが現状です。
そもそも「法的な要件」を満たせていなければ無効になりますし、最低限の「法的要件」を満たしていたとしても、財産の記載があいまいであったり、訂正方法に問題があったり・・と、とにかく判断に迷うようなものがほとんどです。
一方で、公正証書遺言では、無効になる心配はほとんどありません。
自筆証書遺言は、紛失のリスクが高い
更に、自筆証書遺言は、その用紙自体が原本です。万が一失くしてしまったり、その内容が気に入らないと思った人に捨てられてしまったりすれば、再生は不可能です。
一方で公正証書遺言は、公証役場に原本の保管がされますので、紛失の心配はありません。手元の用紙を失くしてしまっても、また公証役場で謄本の再発行を受ければ良いのです。
(2020年11月追記:改正により、自筆証書遺言であっても法務局へ預け入れたものは、紛失のリスクはなくなりました。)
4、自筆証書遺言は、相続手続きに時間が掛かる
最後に、実際の相続手続きでの手続き先である金融機関等にとって、自筆証書遺言の信用度は非常に低いという点が挙げられます。これはおそらく、前述のとおり、自筆証書遺言で「完璧なもの」がほとんど存在しないことが原因です。
金融機関によっては、たとえ内容がきちんとしていても、自筆証書遺言であれば、受取人以外に、その他すべての相続人の印鑑がないと手続きができない、という対応をしているところもあります。当然、遺言書の内容に納得していない相続人は押印などしないでしょうし、争続の原因にもなりかねません。
このように、自筆証書遺言は、作成時こそ手軽な一方で、残された家族にとっては、問題の多い形式なのです。
遺言書を作る目的を忘れないこと
遺言書は、「作って、終わり」では意味がありません。実際に相続が起きた後、残された家族が問題なく手続きを終えられて初めて、遺言書の役割を果たせたと言えるのではないでしょうか。
遺言書を作る際はぜひ、「誰のために作るのか、何のために作るのか。」という視点を忘れることなく、実際に手続きに使える遺言書を作成するようにしてください。
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