遺産分割協議と、自宅不動産
遺言書がない場合、相続が発生すると、亡くなった被相続人の財産を相続人同士でどう分けるか、「遺産分割協議」を行います。当人同士の話し合いさえまとまるのであれば、基本的には遺産を相続人間でどのようにわけても構いません。
では、仮に遺産分割協議の結果、配偶者が自宅不動産を相続できなかった場合、配偶者はすぐに出ていかなければならないのでしょうか。
配偶者短期居住権とは
こういったケースに体操するため、2018年7月に成立した改正民法において、配偶者短期居住権の制度が創設されました。
配偶者短期居住権とは、どのような遺産分割がなされても、またどのような遺言書が残されていても、相続開始時、被相続人所有の建物に無償で住んでいた配偶者は、少なくとも相続開始後6か月間はその家に無償で住み続けることができるという制度です。
では、配偶者短期居住権で、いつまで居住できるのでしょうか。
配偶者短期居住権の期限
配偶者短期居住権により、配偶者が無償で自宅は住める期限は、いつまででしょうか。条文は、下記の通りです。
(配偶者短期居住権)
第千三十七条 配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める日までの間、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の所有権を相続又は遺贈により取得した者(以下この節において「居住建物取得者」という。)に対し、居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にあっては、その部分について無償で使用する権利。以下この節において「配偶者短期居住権」という。)を有する。ただし、配偶者が、相続開始の時において居住建物に係る配偶者居住権を取得したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し若しくは廃除によってその相続権を失ったときは、この限りでない。
一 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合 遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から六箇月を経過する日のいずれか遅い日
二 前号に掲げる場合以外の場合 第三項の申入れの日から六箇月を経過する日
2 前項本文の場合においては、居住建物取得者は、第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げてはならない。
3 居住建物取得者は、第一項第一号に掲げる場合を除くほか、いつでも配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができる。
つまり、下記のようになります。
- 遺産分割によって、配偶者以外の者が居住建物を取得した場合・・遺産分割協議で、誰がその建物を取得するのかが決まった日と、相続開始の時から6か月後の、いずれか遅い日まで
- 遺言で、配偶者以外の者が居住建物を取得した場合など・・相続が起きた後で、取得した人から「出ていって欲しい」と言われてから6か月後まで
いずれにしても、少なくとも相続開始から6か月間は、自宅に無償で住み続けられるということです。
遺言書作成は、専門家へ相談を
とは言え、6か月経過後には配偶者は新たな居所を見つけ、出ていかざるを得ないのです。高齢のことも多い配偶者が、新たに住処を探すのは簡単なことではないでしょう。
配偶者をこのような事態に陥らせてしまわないためにも、やはり被相続人が元気なうちに、きちんと遺言書を作成しておくことをお勧めします。
また、遺言書の作成は、将来に起きうるリスクを検討することが不可欠です。作成の際はぜひ、安易に一人で作成するのではなく、専門家にも相談されることをお勧めします。
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