配偶者居住権とは
2018年7月の民法改正により、配偶者居住権が創設されました。
配偶者居住権とは、被相続人名義の自宅不動産を、「自宅不動産の所有権」と「配偶者が亡くなるまでその不動産に無償で居住する権利(=「配偶者居住権」)とに分けて相続できる制度です。
これにより、従来より柔軟な遺言や遺産分割が可能となりました。
配偶者居住権の対象となる建物の修繕費は、誰が負担するか
では、配偶者居住権の対象となる建物にかかる修繕費は、誰が負担するのでしょうか。
結論は、修繕費は、その修繕が通常の必要費であれば配偶者が負担し、特別な支出が必要になったり、建物の価値を増加させるような有益費を支出したりした場合には、建物所有者が負担します。
根拠となる条文は、下記の通りです。
第1033条(居住建物の修繕等)
配偶者は、居住建物の使用及び収益に必要な修繕をすることができる。
2 居住建物の修繕が必要である場合において、配偶者が相当の期間内に必要な修繕をしないときは、居住建物の所有者は、その修繕をすることができる。
3 居住建物が修繕を要するとき(第一項の規定により配偶者が自らその修繕をするときを除く。)、又は居住建物について権利を主張する者があるときは、配偶者は、居住建物の所有者に対し、遅滞なくその旨を通知しなければならない。ただし、居住建物の所有者が既にこれを知っているときは、この限りでない。第1034条(居住建物の費用の負担)
配偶者は、居住建物の通常の必要費を負担する。
2 第583条第2項の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する。
1034条2項にて参照している条文は、下記の通りです。
第583条
<略>
2 買主又は転得者が不動産について費用を支出したときは、売主は、第196条の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、有益費については、裁判所は、売主の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
さらに、196条は次の通りです。
第196条 占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。
2 占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
配偶者居住権の活用を検討する際には、この辺りも知っておかれると良いでしょう。
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