遺言書は、法的要件だけ満たせば良い?
遺言書をつくるとき、やはり多くの人がまず気にするのは、法的要件。確かに遺言書には形式上の要件も多く存在し、その要件を満たさなければ、せっかくの遺言書が無効になってしまいます。
しかし、法的要件はあくまでも、遺言書が遺言書であるための最低限の要件でしかありません。実際に相続が発生し、スムーズに手続きをするため、また、無用な揉め事を防ぐためには、法的要件を満たすのみでは不十分です。
ここでは、遺言書の見直しのうち、「隠匿・改ざんのリスク」に焦点をあて、解説していきます。
隠匿されれば、実現しようがない
当然ですが、そもそも遺言書が隠匿されたり改ざんされたりすれば、その遺言書は実現しようがありません。
そのため、遺言書を作成する際には、「その遺言書は、隠匿されたり、改ざんされるリスクはないか」という点にも配慮して、作成する必要があるのです。
公正証書遺言なら、改ざん・隠匿は不可能
では、遺言書の種類別に見ていきましょう。
作成した遺言書が公正証書遺言であれば、作成した時点で公証役場に原本が保管されます。遺言者に交付されるものは、その原本をもとに作成した謄本(又は正本)です。そのため、いくら手元にある謄本や正本を改ざん・隠匿したとしても、公証役場からまた謄本の交付を受ければ良いだけ、ということです。
自筆証書遺言の場合
自筆証書遺言は、その用紙自体が原本ですから、改ざんや隠匿のリスクは公正証書遺言よりも格段に高くなります。
そのため、自筆証書遺言であれば、作成した時点で信頼できる相続人に渡してしまうか、または相続が起きたときに容易に見つけてもらえるが、存命中は見つけられなさそうな場所で厳重に保管する必要があります。
自筆証書遺言の法務局での保管制度
なお、2018年の相続法改正の中で、自筆証書遺言の法務局での保管制度が新設されました。実際に制度が始まるのは2020年7月10日からなのですが、これ以降であれば、法務局にて自筆証書遺言を保管してもらえるようになります。
この制度を利用した場合には、公正証書遺言同様、遺言書の改ざんや隠匿は困難となります。そのため、自筆証書にて遺言を作成する場合には、保管制度も積極的に活用すると良いでしょう。
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