遺言書は、法的要件だけ満たせば良い?
遺言書をつくるとき、やはり多くの人がまず気にするのは、法的要件。確かに、遺言書には形式上の要件も多く存在し、その要件を満たさなければ、せっかくの遺言書が無効になってしまいます。
しかし、法的要件はあくまでも、遺言書が遺言書であるための最低限の要件でしかありません。実際に相続が発生し、スムーズに手続きをするため、また、無用な揉め事を防ぐためには、法的要件を満たすのみでは不十分です。
ここでは、遺言書の見直しのうち、「寄付先の確認は取っているか」という点に焦点をあて、解説していきます。
遺言書での寄付は必ず受け入れないといけないか
まず、前提の話をすると、遺言書でいくら「寄付をする」とか「遺贈をする」と書いたところで、もらう側に義務が生じるわけではありません。
特定の財産についての遺贈ならいつでも、包括的な遺贈でも知ってから3か月以内であれば、拒否ができてしまいます。
そのため、仮に良かれと思って遺言書で寄付をすると書いたとしても、寄付先から断られる可能性もある、ということです。
事前に寄付先へ確認を
まず、土地などの不動産であれば、よほど価値のある不動産であったり、その団地が使用している土地の近隣であるなどの特殊事情のない限り、「もらっても困る」ということも多いでしょう。例えば「使っていない土地だし今後も誰も使わないから」というような土地では、ほぼもらってもらえないと思った方が良いと思います。
では、預貯金であれば必ず受け入れてくれるのかというと、これも実は団体の方針により様々です。団体によってはそもそも遺言書での寄付の受け入れ態勢ができておらず、手続きの煩雑さを回避するために拒否することも十分に考えられます。
また、仮に遺留分を侵害したような場合には、団体側からするといらぬ争いに巻き込まれる可能性もあるわけですから、そういった危険の回避のため、拒否をすることも十分あり得るのです。
実際にお客様の希望する寄付先へ受け入れ態勢の確認をした際には、遺留分も侵害しておらず、かつ預貯金の遺贈であっても、半数程度の団体は「受け入れ態勢がない」という理由で辞退したいといわれました。
遺言書を作る前の確認であれば、別の寄付候補先を探すことが可能ですが、実際に相続が起きてしまってから辞退されてしまうと、その分の財産が宙に浮いてしまうことにもなりかねません。
そのため、寄付をしたいという場合には、可能な範囲で、あらかじめ寄付候補先へ受け入れ態勢を確認されることをお勧めします。
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